□曖昧なひとたち
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「駅の近くのカフェテラス」
いつも君との待ち合わせはここ。いつの間にかそう決まっていた。特に行き先を決めて会うことは少ないから。

乾燥した冬の空気が漂う東京の端っこで、僕のコーヒーと君の紅茶がふんわりと香る。そしてふたりでひっそりと話すんだ。ドラマみたいに甘くとろけるようなセリフを交わすわけでもないし、不景気でどうの…なんていう憂いの言葉も使わない。いつもたわいない世間話で終わっちゃうけれど、それでいいんだ。

木枯らしに凍える数多の人がチラリチラリと視界の隅に入ってはまた消える。まだまだ春は遠いようだ。早く暖かくならないかなあ…なんて一瞬ぼんやりとしていたら、「ちょっと!話聞いてるの?」と君がむくれた顔をするものだから、わざと「8割聞いてなかった」って冗談言って君の頬をもっと膨らませたくなる。そして機嫌直しに「3杯目はいかが?」と勧めた。




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