□ひとときの
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受付嬢が此方に手を振るので軽く手を挙げて応えると、顔を赤らめ彼女の同僚だろう女性たちとはしゃぎ合う。
女性はパワフルである。あの小さな身体の何処に男に勝るエネルギーを隠し持っているのだろうか。子を産んだ女性は強い、などとよく言うが出産の有無ではない。若かろうが老いてようが女性は常に自立し、輝いて見えるから不思議なのだ。

そんなことが無意識の間に取り止めもなく脳内を巡る。するといきなり左肩をバシバシと遠慮なく叩かれ、はっと覚醒した。

「よっ!待ってたぜ、マスタング中佐殿」

「ヒューズ!」


隣で豪快に笑ってみせたのは、士官学校時代からの友人、ヒューズだった。先程は上の空だったので気付かなかったが、どうやら出入口付近にいたらしい。

「こんな所でどうしたんだ?今帰りか?」

「ああ、まあな。だからお前さんを待ってたんだ」

「?」

ロイとヒューズは執務の場所も違えば、任務も異なる。同じ中央勤務だとしてもそうそう会うような機会はなく、お互いこうやって話すのは久しぶりである。
だから、ロイはヒューズに今日が夜勤でないことを告げた覚えはない。何故ヒューズは自分がこの時間にここに来ることを予測出来たのか、そしてどういった用件なのか。
ロイは片眉を上げ、ヒューズを見た。

「周りの女の子たちがはしゃいでたぜ?今日マスタング中佐をお食事に誘おうかしらー、ってな」

「ああ、そういうことか」


本当に女性は凄い、と改めてロイは実感した。
時にはあり得ないような噂話で持ちきりになるかと思えば、どこから手に入れたのかロイのスケジュールを正確に把握している。
ヒューズは、その情報を聞いて今に至るようだ。「ロイのことは女性に聞くのが一番早い」と言って、また大声で笑った。



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