□ひとときの
1ページ/4ページ



赤く染まるはずの空は厚い黒々とした雲に覆われ、ぽつりぽつり、と小さな雫を落とし始めた。そしてそれはすぐに激しい音に変わり地面を強く打ちつける。

その様子を執務室の窓から見ていたロイは、タイミングの悪さにひとつ溜め息を吐いた。
連日仕事続きで数日間自宅に帰っておらず、仮眠室と執務室の往復しかしていない。今日ようやく夕刻時に帰ることが出来るとなった矢先の雨だった。
雨天時に外に出るのも億劫である上に、雨具は持ち合わせていない(数日前に自宅を出たときは快晴だったので、当たり前だ)。しかしこのまま職場である、中央司令部に居残るのも気が進まない。ロイは意を決して、軍から支給品されたコートを羽織り執務室を後にした。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ