□距離
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すうすうと心地のよさそうな寝息が、リビングの乾いた空気によく響く。

「まったく・・・」

座木は大きな溜め息をひとつついてからその場にしゃがみ、秋の頭をそろりと撫でた。
日の光に透けたセピア。さらさらとした秋の髪は座木の長い指をするりと抜ける。

いとも容易く逃げていくそれは、まるで秋のようだった。否、髪の先まで秋自身なのだ。
捕まえようとしても、追いつこうとしても、そうさせてはくれない。

壊れそうなのに、強い。
その強さ故に、この人は一人でも生きていけるのだ。今までも、これからも。


遠い人。
何時までたっても縮まらない距離。



しかしこの人は後ろ髪なんて引かせてはくれないのだろうな、と思った時寂しさを覚えた。


「・・・置いて行かないで下さい」


座木は大きな手でもう一度だけ頭を優しく撫でた。



fin...
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