□距離
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窓ガラスは寒風にがたがたと揺れ、室外の寒さを感じさせる。だがしかし冬の日差しはリビングの中腹に置かれているソファまでを明るく照らし、そして暖める。

だから、冬の午後はいけない。




「秋。・・・こんな所で寝ていると、風邪をひいてしまいますよ。」

座木は、ソファに寝転がり全く身動きをとらない少年を優しく揺すり起こす。
安らかな寝顔を湛える少年は、この深山木薬店の店長を務める深山木秋。
もう十二月になるというのにベージュのセーター一枚で、ソファの上に小さく縮こまりうたた寝をしているのだ。

「ほら、秋っ!!起きてくださっ・・・!!」

もう一度声をかけながら身体を揺すると、返ってきたのは・・・右ストレート。
もう何年も同居している座木は特別驚きもせずに軽くかわし、次の攻撃を阻止すべく引っ込みかけた右腕とソファから投げ出された左腕を掴んだ。しかし、そんなものはこの少年には効かない。
掴まれた両腕に力を込め、軸としてうまく使うことで身体を大きく捻った、秋渾身の踵落としが座木を襲う。

「っ!!」

せっかく掴んだ両腕をやむなく離し、秋の頭の方へとすばやく飛びのいた。
そして、攻撃を終えた秋の脚はまたソファの上に小さく収まっていった。

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