novel2

□貴方に捧げる賛美歌
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※軽く白石くんとオサムちゃんが親族設定です。
それでも宜しければ、どぞ!













娘に彼氏ができた気持ち、

ってこういうんやろか…。


………俺まだピッチピチの独身なんやけどなぁ!





貴方に捧げる賛美歌







よお。四天宝寺中テニス部顧問の渡邊オサムや。
俺の朝はいつも一杯のコーヒーから始まる。

嘘や。

今日も遅刻ギリギリに目が覚めた。
目覚まし…はちょうど電池が切れて2時を指した時点で止まっていた。
いや、今日はホンマはよ起きようと思っとったんやで?

そう誰にでもなく言い訳しつつ、軽く顔を洗って急いで支度を済ませて玄関の扉を開ける。

ここから職場である中学までは急いで5分だ。
大学卒業と教員免許取得、そしてここに勤める事が決まった際に実家を出て一人暮らしを始めた。
すでに姉はずっと前に嫁いでいて(結構歳が離れとんねん)家には両親と俺だけが住んでいた状態だったから、当時俺の荷物がなくなると凄く広く感じた。

そんな物思いに耽りながらひたすら走る。

…朝っぱらから27にもなっての全力疾走はとてつもなくキツい。
本当に若い生徒達がうらやましくなってくる。

しかし今日は全校での朝礼があるのだ。
遅れたらまた教頭に愚痴を言われてしまう。

いや、愚痴はええねん。
ただあのハゲ頭を見とると、怒られとるのに笑いが込み上げてくんねんな。
アレは結構地獄やでー?


そうこうしているうちにラストスパート、微かにうちの校門が見えてきた。
ぐっ、と地面を踏みしめる足に力を入れる。
これでも学生で現役時代はインターハイにも名前を連ねる程だったのだ。
あの頃の輝きといったら、もうなんていうか言葉に表せられない。
ちょうど試合を見に来ていた甥っ子(さっき少し触れた姉の子や)がテニスを始めた位やからな。


と、俺がスピードを上げたと同時に、すぐ横の道からにゅっと人影が急に視界に入ってきた。
しかもあちらも相当な速さだ。


「ッ!!!」


アカン、ぶつかる─…ッ!





「─ッ蔵、あぶなか…っ!!」


「ぅわっ!」




「って?!……うがっ!!!!」


ズササササッ!!!!




「あ、危なかぁ…」

「…わ、悪い…助かったわ」

「んーん。それよかどっか怪我しとらん?」

「いや、大丈夫や。おおきに…って」

「…あれ?」


「「……オサムちゃん何やっとるん?」」


「………。」




…あー、…説明しよう。

まず、全力疾走していた俺。
その脇から突然飛び出した人影。

それからぶつかると思って必死に方向転換した俺。
飛び出した人影の後ろから伸ばされたもう一人の腕。

無事その腕に抱き止められて俺との直撃を逃れた人影。

……勢い余ってコンクリートと抱擁した、俺。


そして、痛い額を抑えながら見上げたそこには


「…白石、と千歳…やないか…」

俺の愛する生徒共だった。










「オサムちゃん転けるん早いで?掴みの聖門はまだ先やん」

「いやいや白石?コレ見て!オッチャン頭から血ぃ出とるから。お前が急に出てきたせいやから」

「知らんがな。もうちょい華麗に避ければええやろ」

「…ホンマ可愛くなくなったなぁお前」

「オサムちゃんに可愛え言われても嬉しないわぁ」

「なんですと?!」


なおも千歳に抱き寄せられた体勢のままいけしゃあしゃあと言う。
なんや!だったら千歳に言われたら嬉しいんか!!


「そんなん当たり前やん」

「勝手にオッチャンの頭ん中読まんでくれる?!」

怖いこの子!


「あはは、ほなこつ蔵はむぞらしかねー」

「だって…千歳の事大好きやもん」

「俺も愛しとうよ」




─あああ騙されとるで青少年!!!


「てか、仕事…っ!」


──キーンコーンカーンコーーーン…


「「…あ、学校」」



俺の叫びの甲斐なく、校舎からチャイムが鳴る音が高々と聞こえた。
抱き合ったままユニゾンした呟きにますます虚しくなりました。





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