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□涙腺
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キミが、泣いた。
笑いながら、泣いた。

ボクは、キミを抱いた。
静かに泣いている、キミを。





優しい風が吹き抜ける室内。
少し見上げると美しい三日月。

蒼白い光が差し込む部屋。

…暗闇でなく。
月明かりが二人を照らしている。







静かに涙を流す進藤は…
自分を抱き締める塔矢の背中に、手を回してしがみついている。




(キミは何を失ったの?)
(ボクでは補えないのかな)




塔矢の言葉の直後…
進藤は言葉も出さずに静かに涙を流した。

今まで堪えてきた何かを放出するかのように。
涙腺が崩壊したかのように。





(キミを愛している)
(俺だって…)

塔矢にしがみつきながら、塔矢の呟きに進藤は小さな声で答えた。






重なる鼓動の中で…
進藤は静かに塔矢を見上げた。

そして、目を閉じる。
その行動の直後…塔矢は静かに進藤の唇に自分の唇を重ねる。





ボクは、ここにいる。
いつだって、ここにいる。

キミを愛して、キミを守る。
悲しみから痛みから、守るから。






「お前…優しすぎるよ」
「…キミにだけだよ」
「なぁ…」
「何だい?」
「俺を…手放すなよ」
「頼まれても手放すものか」


塔矢は進藤を真っ直ぐ見つめた。
進藤はその視線の中で嬉しそうに笑って…泣いた。





「朝まで、しようぜ」
「……泣いてもやめないよ」
「何度も…中に出してくれよ」
「…凄い誘い方だな」
「たまには…な」




押し倒されながら、進藤は嬉しそうに塔矢にしがみついた。


お前になら一生をやるよ。
進藤はそう呟いて目を閉じる。








(ボクたちは離れないよ)
(何があっても離れない)
(運命の絆を感じるから)




揺れる二人の体を、月光が包み込んでいく。



時を永遠にするかのように。
全ての痛みや悲しみから、二人を遠ざけるかのように。









(END)

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