text〜古キョン
□エイプリルフル企画【完結】
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「キョン!あんた何で来なかったのよ!」
「はぁ?」
キンキンと耳の奥に響く声の主は…
そう、ハルヒ。
こいつからの電話を無視したら、ろくな事がない。
だから、精神状態が落ちてようが何であろうが電話をとるしかないのだ。
「さっぱり意味がわからん。何か招集かかってたか?」
何もSOS団の予定は入ってなかった筈だと記憶を辿りながら、電話の向こうでカッカしている団長様に、もう少し静かに喋るように注文をつける。
「で…いつ、どこに行かなかったって?」
「古泉くんの見送りよ!」
「み、見送りって何の事だ?」
あいつ、どっか行っちまったのか?
そんな事一言も言ってなかったじゃねーか。
嘘…だろ?
心が、音を立てて波打っているような感覚に陥る。
もしかして…
別れって、そういうことかよ。
「あいつ、どこに行ったんだ?」
慌てて聞いた俺に、ハルヒは絶望を与える言葉を発した。
海外、だと?
ショックからなのか喪失感からなのか、俺は家までどのルートを通ったのか思い出せないでいた。
「キョンくーん」
家に入ろうとした途端、突然ドアが開いて勢い良く妹が飛び出してきた。
「おい、危ないだろ」
「ごめんなさーい。あっ、キョンくん、早く早くー」
グイグイと手を引っ張られて電話前まで連れてこられると「古泉くんから電話だよー」と明るく言われて、一瞬時が止まったようだった。
ピョコピョコと立ち去る妹に早く言えよ、と心の中で大いにツッコミを入れたのは言うまでもない。
何を話したらいいのかとか、何か聞いてもいいのかなとか、頭ん中がぐちゃぐちゃになって、ただ感情だけが先走ってしまう。
「…っ」
「もしもし…?」
話したいのに、声にならない。
次から次へと目から大粒の涙が零れ落ちて、電話の向こう側で俺の一言目を待っているであろう古泉に、泣いている事を悟られないように必死で堪えるのに、そうすればそうするほど涙が溢れ出して止まらなかった。
すまん、古泉。
まだいろいろ気持ちの整理がついてないみたいだ。
「…っ……あ……のさ……」
「はい」
「その……っ……」
今話さないと一生後悔する。
そんな事重々わかっているけど、言葉として全く紡ぎ出せない。
まず泣き止まないと始まらないと、目をゴシゴシ擦ったところで、心地いい声が耳に届いた。
「何か、いろいろすみません。あなたに伝えなくてはいけない事がたくさんあるんです…」
そう言って、一度言葉を区切った古泉は、少々間を置いてから
「あなたに会いたい」
そう、俺に告げた。