text〜古キョン
□あなたと僕の幸福論【完結】
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「なぁ、古泉。お前…幸せか?」
秋の匂いが鼻先を擽る9月。
登下校はブレザーがないと寒さを感じる季節へと移り変わろうとしていた。
部室棟の窓から吹く風がどこか寂しさを装い、転校してきて何ヶ月経つのだろうかと数えてみる。
僕は心のどこかで、機関の任務を果たす超能力者としての立場に不満を抱いていたのだろう。
4ヶ月…。
いつまでこんな日々が続くのだろうか、と窓の外をぼんやりと眺める。
学校生活はいたって平凡で、楽しくない訳ではない。
部活だって、神の精神安定剤として働く日々は、なかなか刺激的で良いとさえ思っている。
好きな人だっている。
青春を謳歌していると言っても間違いではないのかもしれない。
ただ…
機関での立場が障害となるものがある。
僕の想い人は、想ってはいけない…
手を出してはいけない人。
部室の戸締りを頼まれた彼が
「先帰ってていいぞ」
なんて言葉を残して僕に背を向ける。
彼の後姿を見送って靴を履き替えると、正門へと向かい立ち止まった。
一人で帰る気なんて更々ない。
少しでも彼と一緒に過ごしたい。
だって、僕は…
彼に恋をしている。