text〜古キョン

□エイプリルフル企画【完結】
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「別れましょう…」


それが、最後に俺の耳に届けられた言葉だった。


「冗談、だろ…」







今年の桜はまだ満開を迎えていなかった。
4月が始まってもう5日経とうとしているのに、どうしたもんかね…

去年の桜事情はどうだったのだろうかとか、ふと考えてみた所で、今の俺にはどうでもいい事で、全てに置いてどうでもいいとさえ思えるほど、何もかもを投げ出したい思いでいっぱいだった。

不意に外に出たくなって玄関のドアを開けたら、ふわりと春風が体を包み込んで、咲き始めた桜の花びらがヒラヒラと宙を舞っていた。

「あれから、5日か…」

そう口に出してしまったら、急に感情のコントロールが利かなくなって涙が零れた。

「…っ」

ビックリだな。
お前の事がこんなにも好きだったなんて。



見慣れた街並みがくすんで見えた。

去年の秋に見た季節外れの桜はとても綺麗で、年中咲いていればいいのにとさえ思えた。
だから、きっと春に咲く桜を見たらまた感動するだろうと思っていたのに…
今、俺の目に映る桜は何故かくすんで見えた。

全てが色褪せて、春の陽気な気分なんてひとつもなかった。

「そろそろ切り換えないとな…」

口にはしてみるものの心の整理は全くつかなくて、散歩でもすれば少しは楽になれると思っていたのに。

目に映る古泉と見た景色が全て色褪せていた。

「はぁ…」





ズボンのポケットで携帯がブルブルと震えた。
今は誰とも話したくなくて、取り出した携帯の電源を落とそうとしたのに…
液晶に映し出された文字を見て、俺は通話ボタンを押した。




「もしもし…」
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