text sample〜古キョン

□Endless Summer
1ページ/1ページ

【夏のかけら】

「そんなのダメよ!」

そう大きな声で机をバンッと叩いたのは、我らがSOS団団長涼宮ハルヒ。
何故こいつがヒートアップしているのかと言うと、散々夏休みを遊び倒したと言うのに何かまだ納得がいかないご様子で、現に俺達がエンドレスサマーのループから抜け出せないのもそこにあると言える。
ならば、ハルヒのしたいようにさせたらループから脱出出来るって思うだろ?
それが、だ。
こいつはまたもややこしい事を言い始めたから、脱出の糸口を失ってしまったのだ。

「私はもう良いのよ。やりたい事ぜーんぶやったから。宿題も終わってるし。でも、私だけ満足じゃ不公平だわ。みんなが満足しないと、この夏休みは終われないわよ」

去年の事も踏まえて宿題も終わらせたって言うのに、これじゃあ、あと何をやれば夏休みを終らす事が出来るのかさっぱり思いつかない。
あ、先に言っとくけど、このエンドレスサマーのループに陥ったのは今回で二度目だ。
だって俺達二年生だぜ。
毎年こんな夏休み迎えなきゃならんとか、たまらん。
来年は何とか回避だ回避!  
頭を抱える俺の横で絶えずニコニコしているイケメン野郎が、そっと聞こえる様に小さな声で言う。

「あなたの望みが叶えば脱け出せるのでは」
「俺の望みねぇ。そう簡単にいくか?」
「このままではどちらにせよ脱出は出来そうにありません。ならば、何かをしなければ終わりも来ませんよ」

そうコソコソと二人で話をしていると、いつもの様にハルヒに見つかり指を差される始末。

「何か意見があるなら言いなさい」
「そうだな。みんなの望みでも聞いてやったらどうだ?そしたら、残りの夏休みを満足のいくもんに出来るんじゃないのか?」

言い終えた所で隣に座る古泉が俺の膝をツンツンと突いたので、何だ?と顔を向けるとウインクを返される。
気持ち悪ぃんだよ、全く。

「そうねぇ。じゃあみくるちゃん!何かある?」

そうハルヒに問われて、突然の指名にビックリした朝比奈さんは小さな声で答える。

「別にないですぅ」
「じゃあ、有希は?」
「ない…」
「そう…」               

長門の返事は予測がついていた。
相変わらずの即答。
さて、古泉は何と答えるのかと少し期待していたが、やはり予想通りの返事を返す。

「そうですねぇ。特に思いつきませんが、彼ならあるんじゃないでしょうか」

そう突然ネタを振られて何も用意してなかった俺は前々からしたいと思っていた事を実現させるために希望を言った。

「残りの夏休みは、ゆっくり休みたい」

それに対しハルヒがまた何を言い出すかとヒヤヒヤしていたが、俺の予想違いな答えに拍子抜けする。

「そうね。じゃあ、明日からSOS団は休みにしましょう」
「え…」
「何よキョン。あんたの意見を通してあげようって言ってるんじゃない」

あっさりと飲まれた俺からの要求。
これで、エンドレスサマーのループから脱出出来るのだろうか。

「その代わり、無駄に貴重な休みを過ごしたら許さないから!」
「へいへい」

このループを抜け出せるかは俺次第って訳か。
どうしていつも俺に降りかかってくるんだ、全く。 
一通り話し合いが終わったところで、俺達SOS団は解散となり、女子三人は帰りにかき氷を食べに行くと、あっという間に目の前から居なくなってしまった。
残るは俺と古泉なんだが、どうしても言わなくてはならない事があり、カタンと立ち上がった目の前の男の服の裾を掴んだ。

「おや、どうしましたか?」
「古泉…」

俺は少し緊張していた。
なかなか言い出せなくて、俯いていると、古泉が少し屈んで俺の顔を覗き込む。

「顔が赤いですね。熱でもあるのでは」

その言葉が耳に入った瞬間、少し冷たい古泉の手が俺の額に触れた。
咄嗟の事で驚いて一歩下がった俺に、古泉は「すみません」と小さな声で言って手を離した。
その手を今度は俺が掴む。

「なぁ、古泉。俺の望み…聞いてくれないか?」

そう小さな声で言ったら、得意な笑顔を向け
た古泉は「良いですよ」と返事をくれた。
何て顔してるんだ。
いちいちカッコイイんだよ、全く。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ