text sample〜古キョン

□スレチガイLOVER ☆☆☆
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中学一年の春。
ある朝、いつものように目覚めた僕は、何故か自分がいつもと違う様な感覚に陥った。
見た目が変わった訳でも、その時、何か不思議な力が使えるようになった訳でもなく、ただ…何かが違うような気がした。
いつものように家族に挨拶をし、いつものように学校へと向かう。
何一つ変わらない日常が一変したのは、キーンと鳴り響く閉鎖空間発生の音だった。
吸い寄せられるように向かった先には、灰色の空間が待ち受けていて、考えられないような大きな物体がまるで何かに怒りをぶつけるかの様に暴れていた。
その時の僕は、ただ足がすくんで赤い玉が飛び交う様を見つめる事しか出来なかった。

あれから3年。
目覚める度に自分の力がどうなってしまうのか恐れる日々を過ごした。
早くこの超能力と呼ばれる力がなくなればいい。
この力が有る限り、僕は普通の学生に戻る事は出来ない。
機関に言われるがままに行動する駒の一つとして、この先の人生を歩む事となる。

何故僕が?
何度もそんな問いが頭の中を駆け巡るが、誰でも良かった、選ばれてしまったのだから仕方が無いと理解するには難しい運命だった。
夜中であろうが、閉鎖空間が発生する度に呼び出される日々。
精神的不安定であった『涼宮ハルヒ』という少女を、僕はきっとどこかで恨んでいた。
彼女さえ居なければ、僕は平穏な日々を送る事が出来たんだと。

そんな鬱状態に陥った僕に言い渡された『転校』という二文字。
残酷としか言いようがない。
これ以上僕に何をしろと?
頭でいろいろ考えたところで、どうする事も出来なかった。
これは機関から言い渡された絶対事項なのだから。

僕は全てを捨てた。
感情という名の心は自分の奥底へ沈め、表情という名の顔は笑顔の仮面で覆い尽した。
その方が好都合だと理解したから。


*  *  *


「一年九組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も…」
「古泉一樹です。…よろしく」

あの日の事を僕は鮮明に覚えている。
まさか『神』自ら僕に近付いて来るとは思ってもみなかった。
資料下で何度も目にした神と呼ばれし少女。
その少女を取り巻く『未来人』『宇宙人』そして…神に選ばれし少年。
僕はあの時、何故一番に唯一の男子部員の彼に手を差し出したのだろう。
神が選んだ『鍵』と呼ばれる存在だったから?
いいえ。
散々目にしてきた機関からの資料の彼を目の前にして、何故か心がざわついたから。
あの瞬間、彼は好意的な目で僕を受け入れてくれた。
握手を交わした彼の手が、僕よりも温かかったのを今でも覚えている。

「古泉、ホントに入部して良かったのか?」
「えぇ、いずれこうなっていたでしょうから」

僕達は少しずつ距離を縮めた。
鍵である彼の協力を得られれば、神の精神的安定を図れると思ったから。
だが、彼は違った。
僕を見つめる瞳が少なからず熱を帯びている事に、僕は気付いてしまった。


*  *  *


ひらひらと茶色く色付いた葉が舞う十月。
ふわりと風が吹いても春の柔らかさはなく、どこか寂しさを肌に感じさせた。
隣で、カッターシャツの裾を少しだけ捲り上げた格好の彼がブルッと身震いをする。

「上着、着たらどうですか?」
「あぁ…教室に置いてきた」

貴重な昼休みだと言うのに、彼は屋上で昼御飯を共にしてくれていた。
いつもなら教室でクラスメイトと過ごしている彼は、昨日の帰りに「明日の昼メシ、一緒に食おうぜ」なんて言ってきた。

彼から何故?
きっと涼宮さんの事で話があるのだろうと僕は理解した。

僕は背中を丸めて秋風を凌いでいる彼の肩に、そっと着ていたブレザーを掛けた。

「古泉!お前寒くないのかよ」
「僕は大丈夫ですよ。それに、あなたに風邪をひかれては困りますからね」
「全ては…ハルヒのため、か…」

彼は少し悲しそうな顔をして、自分のシャツの袖をギュッと握った。
そんな姿を見ると、彼に対して芽生え始めている感情を口にしてしまいそうになる。
『鍵』という言葉で気持ちを押し殺す。
僕は涼宮ハルヒのために存在するのであって、彼のためではない。
そう言い聞かせる事で自分を守る。
相変わらず僕は狡い。

「俺に優しくするなよ」

ポツリと小さな声で呟いた彼は、今にも泣きそうな顔で俯いていた。

「あの、どうされたんですか?今日のあなたは何だか…」
「勘違いするだろ」
「それはどういう…?」

俯いていた彼は膝に顔を埋め、耳まで赤くして「好きなんだよ」と呟いた。
驚いた僕はただ「ごめんなさい」としか言えなくて、そんな僕に彼は「わかってる…」と言った。
彼の精一杯の気持ちを受け入れてはいけない。
この先、彼が僕を好きで居続けても苦しむだけで、それならいっそのこと嫌いになってくれた方が彼のためだと思った。

突き放そう…
それが、僕と彼の最良の結末。


*  *  *


彼の告白以来、部活以外で二人きりになる事はすっかり減り、涼宮さんにバレないように距離を置くという日々が続いていた。

「今日はおしまい!キョンと古泉くんは荷物を部室まで運んだら帰っていいわよ」

涼宮さんの元気な声に「へいへい」と返事をする彼をチラリと見ると、トボトボとこちらに向かってくる姿が目に入った。

「古泉、お前ももう帰っていいぞ。荷物は俺が部室まで運んでおくから」
「しかし、一人で運ぶには量が多過ぎますよ」
「大丈夫だから。今日は自転車で来てるし、ボチボチ帰るさ」
「ですが…」
「いいから、お前は帰れ!…二人きりになるのが辛いんだよ」

目の前の彼はすごく辛そうな顔で荷物を持ち上げると、自転車のカゴに無理矢理押し込んで「じゃあな」と一言告げて逃げるように去っていった。
これで良かったんだ。
彼の方から距離を置いてくれれば、僕の事を嫌いになってくれれば、全て丸く治まる。
そう思ったら、何故か心がチクリと痛んだ。

帰ろうと足を自宅へと向けたが、どうも足取りが重くて、気がつけば僕は学校へと向かっていた。
何故自分が今、学校へ向かっているのかわからない。

学校へ行ってどうする?
彼に会う?
彼に会ってどうする?

二人きりになるのが辛いと言った彼の言葉が甦る。
何だか自分がわからない。

ポツリポツリと雨が降り始め、僕は急いで学校へと向かった。
少し濡れた髪と制服をハンカチでパタパタと拭っていると、彼の自転車が目に入った。
彼はまだ部室に居る。
会って何を話したらいい?
彼は嫌な顔できっと僕を追い出すだろう。
それでも足が止まらないのは、ただ…会いたいから。

ホント勝手な男だと、自分に溜め息が出る。
好きになってはいけない。
突き放さなくてはいけない彼に自ら歩み寄る僕はどうかしている。
静まり返った部室棟をひんやりとした空気が漂う。
毎日見ている廊下を、足音を立てない様ゆっくりと進む。
何故か緊張している僕は、転校初日の感覚を思い出していた。
あの時、彼に近付きたいと思ったのは、『神』とか『鍵』とかそういう関わりのものではなく、直感だったのだと思う。
あの頃の僕達のままで居られたら…
こんな、胸の奥を鷲掴みされたような苦しみを味わわなくて済んだのに。


「……ん…………はぁ…」

ドアを開けようとした瞬間聞こえた、艶かしい声。
中の様子を探ろうにも、このドアを開けない限り不可能だ。
だが、今部室に居るのは彼しか考えられない。
しばらく立ち竦んで居ると、また中から声が洩れた。

「……っ……ずみ……」

心臓がドクンと跳ねる。
彼は今…部室で自分を慰めているのだ。
入るべきではない。
入ったら、きっと彼は傷付くだろう。  
しかし、微かに聞こえた自分を呼ぶ声が耳から離れなくて、僕はドアノブに力を入れた。

「失礼します。おや?まだ帰らないのですか?」
「こっ…こいずみっ!」

僕は何食わぬ顔で彼に声をかけた。
驚いている彼は体育座りのまま踞って顔を赤くしている。
一歩、一歩と歩みを寄せると更に小さく踞って、それ以上近付いては限界だと言わんばかりに肩を震わせている。

「どうしました?顔が赤いようですが、熱でもあるのでは」
「来るなっ!帰れよ」

彼に触れようとした手はパシンッと音を立てて払われた。
それでも僕は動こうとはせず、膝をついて彼に近寄った。

「何されていたんですか?」
「べつに…」

僕は知っている。
あなたがここで何をしていたか。
それでも、彼の口から聞きたくてわざと問う。

「顔見せてくださいよ」
「嫌だ。なんで来たんだよ。お前と居ると辛いって言っただろ」
「大好きな僕と居て何故辛いんですか?何なら慰めましょうか?」

僕は彼の腕を強引に掴んで、今までしていた行為をさらけ出した。
きっと僕はおかしくなっていたに違いない。
彼への気持ちを閉じ込める辛さで気が狂れていた。

「離せ、古泉。見るなっ!」
「おや?随分と楽しい事をしていたようですね」
「や…やだっ…」
「ふふっ…嫌がる姿、可愛い」

僕は彼の両腕を掴むと、これ以上無い程に顔を近付けた。
あと少しでキスが出来る程の距離。
予測できない僕の行動に驚いた彼は、顔を真っ赤にして視線を逸らした。
そんな姿に欲情してしまった僕は、彼に深くキスをした。
息が出来なくなる程、このまま彼と窒息死してしまえば幸せなんじゃないかと頭の中で考えながら、何度も何度も角度を変えてキスをした。
さすがに限界がきた彼は、吐息混じりの声を洩らし、顔を背ける。

「…っはぁ……お前…何考えてんだ……」
「何も。あなたの望みを叶えようと思っただけですよ」
「こんな事…望んでない」
「おや?そうですか?」

僕は彼の大腿からスルスルと手を這わせると、先程のキスで少し立ち上がった性器に触れた。

「やっ……古泉、何やってんだっ!」
「何って、お手伝いしようと思いまして」

彼の性器をキュッと掴んでクチュクチュと擦り始めると、敏感なそこは少しずつ膨らみ始め、トロトロと先走りを溢し始めた。 
そんな恥ずかしい行為に何故か抵抗しない彼を不思議に思い顔色を伺うと、顔を真っ赤にして涙を滲ませていた。
噛締められた唇が痛々しくて、そっとキスをすると、我慢していた声が洩れ始め頬を涙が伝う。

僕は興奮していた。
目の前の彼をめちゃくちゃに暴いて、僕だけのものにしたい。
『神』に背く行為だと解っていても、止める事が出来なかった。

両膝を開いて彼の恥ずかしい部分をよく見えるようにすると、両膝に力を入れて必死に抵抗する。
しかし、そんな抵抗も虚しく、僕はチュッチュッと彼の性器を口に含んだ。

「……ひっ…んっ……やだ…やだぁ……」

彼は大粒の涙を流しながら、両足をバタつかせて抵抗していたが、気持ち良さからか、急に全身の力が抜けて大人しくなった。
その隙をみて激しく吸い上げると、体がビクついて声が洩れる。
自分の声に驚いた彼は両手で口を押さえて必死になって声を抑える。
僕は彼の声が聞きたくて、一度性器から口を離して彼の両手を掴むと、自分のネクタイを解いて彼の両手首を縛り上げた。

「外してくれ、古泉!こんなの、嫌だ……」

ネクタイを外そうと手首をギュウギュウと必死に動かしている彼の耳元で「声…聞かせてください」と囁くと、顔を真っ赤にして「いやだ…」と可愛げのない返事をした。
拘束されて自由の利かなくなった彼を目の前にして、僕の興奮は最高のものへとなっていた。
唇にチュッとキスを落とすと、彼のネクタイを解き、シャツに手を掛ける。
ボタンを一つ一つ外し肌に触れると、小さな突起が指に当たり彼から小さな声が洩れた。

「ここ…感じるんですか?」
「知らん」
「そうですか…では」

僕は胸の突起にキスをして、彼の喘ぐ声が聞こえるまで攻め続けた。
声を堪えるのも限界がきたのか、可愛い声を洩らし始めると、モジモジと腰を揺らし始めた。

「気持ち良さそうですね」
「ちっ…ちがうっ…」

早く触ってくれと言わんばかりに主張している性器に再び口をつけると、先程より大きな声が洩れ、またポロポロと涙を流す。
抵抗もなく僕からの刺激を感じている彼を見て、世界がどうなろうと、彼が手に入るのならどうなっても構わないなんて思っている自分は、もう末期だ。
 

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