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□香り
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「うわ…降ってきた」
イヌカシのホテルからの帰り道
淀んでいた空から大粒の雨が降り出した
この小道を行って林を抜ければ地下室だったのに
ついてないなあ
走りだす
クロノスでの生活では
雨に降られることなんて一度もなかった
雨の日は必ず音声で各家庭にお知らせがあり
湿度、降水確率、地域別の情報が提供されていた
しかし西ブロックでは天気予報などない
自分の感覚が一番の天気予報だった
No.6にいたときとの違い、格差に唖然としたものの
ここでの生活で
自分の感覚が研ぎ澄まされていくのがわかるようになった
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