新しい風(改)

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「はぁー、いい汗かいたぁ」

「本当ね、やっぱり朝は霞と打ち合うのが一番気持ちいいわ」

「あ、本当?そう言って貰えると嬉しーな」


自主朝練の後、直幸と他愛のない話をしながら一緒に戻っていると、何やら聞き覚えのない声が聞こえてきた。此処から少し遠くの方かららしい。
はて…今日って来訪予定者とかあったっけ?しかも一軍の子達が帰ってくるのもまだ先だった筈。んー?可笑しいなぁ。


「そう言えば知ってる?霞」

「何が?」


不意に問われたその言葉、思わず意味が分からなくて私より少し背の高い彼女を見上げた。すると彼女は私の方をチラリと見て立ち止まった。私も習うように立ち止まると、彼女は真っ直ぐ指を指した。彼女の指先を追うように視線を移動させると、そこには見覚えのない、まだあどけなさが残る少年達がいた。
直幸は私が彼らを視界に捉えたのを見て、手を下ろした。


「彼ら中学生選抜がこの合宿に来ることって事」

「…へー、随分凄いんだね。これって異例じゃない?」

「当たり前。異例中の異例よ。こんなの今までなかったし」

「ふーん、女子は来ないの?」

「女子も同じく来るわよ。もう既に合流してるんじゃないかしら?」


しれっと言いのけた彼女に私は呆気に取られた。だって中学生達がもう合流してるって事は私達は遅刻…。すると彼女も気が付いたようで、無言で私を見てきた。
そうした暫く見つめあった後、私達は走り出した。そりゃもう今までにないぐらいの速度で走った。だってコーチ怖いんだもん。何が怖いかって?笑顔だよ笑顔。なんつーの?笑ってるのに笑ってない…所謂笑顔の圧力ってやつ?アレは冗談抜きで怖い。何人かトラウマになってたもん。あ、因みに男子と女子とじゃコーチは違うかったりする。まぁそれが良いのか悪いのかは分からないけど…。
てか今はそれどころじゃない。今はコーチの笑顔を見ない為に、死ぬ気で走るしかないんだ。まだ…まだ死にたくない。

そんな事を考えていたからか、先程まで話題にしていた中学生達に見られてたなんて知らなかった。






2013/01/31(木)
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