新しい風(改)
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昨日の雨が嘘のように空は晴れ渡り、空気も清々しい。まさしくテニスに限らずスポーツ日和って感じ。うーん、今のこの朝を表現するならば…
「雨露薫る、良い朝かな」
「何言ってんの霞。まさか寝ぼけてんじゃないでしょうね?」
ポツリ呟いたその言葉に、後ろから呆れたような反応が返ってきた。恐らく彼女も今から朝練する為に此処に来たんだろう。じゃなきゃ此処に居る筈ないもんね。隣に来た彼女をチラリ見、のんびり言葉を返した。
「んー、そのまさかであります」
「馬鹿野郎」
「あでっ」
殴るとか酷いことするねー。そんな間の抜けた声で批判すると彼女、井伊直幸は「うっせ」と返事を返してきた。そして私を置いて歩き始めたので置いてかれないように私も歩き始めた。
彼女、井伊直幸は男っぽい名前にも関わらず女性としてとても魅力的な人物だ。顔は整ってるしスタイルも良い。だがしかし、人間誰しも欠点があるように彼女にも欠点がある。彼女の場合、それは暴力と口の悪さである。
何かあれば取り敢えず暴力沙汰にならない程度に殴る、気に食わない奴が楯突いてきたら取り敢えず泣かない程度に口で負かす。こんな性格の為、彼女は今まで彼氏が出来たことが無い。実に勿体無い。
まぁ本人もそれは自覚しているらしいけど別にいいらしい。なんでも今はテニスに集中したいとか。いやー、流石直幸。そこら辺の男より男前です。
いつの間にか辿り着いていたテニスコート。女子は男子より人数が少ない為、コートの数もそれに伴い少ない。でもまぁ別に不自由なことはないからいいんだけど。
コートに入る為の手続きを済まし、直幸と一緒にコートに入る。あー、やっぱりコートっていいわぁ。
「んじゃ始めるわよ」
「はいはーい。いつでもどーぞ」
私がラケットを構えてそう言うと、彼女はサーブを打った。