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□23罰ゲーム
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穏やかな午後だ。
柔らかい日の差す窓の側、いつもの場所で、新しく買ってきた本を開く。
今日は何やら食堂が騒がしかったが、自分に関係はないだろう。
鬱陶しい、でも切る気も起きない前髪を耳にかけて、文字に目を走らせた。
ばたんっ!
「!?」
そんな時、突然ドアが開いた。
もちろんドアがひとりでに開くはずもなく、誰かが開けた訳なのだが。
その誰か、が、問題だった。
赤い大きな目と、青い長い髪。
それから、かわいらしい、
「…猫耳…?」
猫耳が、ついた、ルカリオだった。
「…あまり、見ないでくれないか…。」
これでも恥ずかしいんだ。
そう呟く彼、ルカリオは白い頬を赤く染め、目を逸らした。
目も大きく童顔な彼は、普段から女性と間違われることも多い。
それでも、普段はその無表情さと少しきつめの眼差しのおかげで辛うじて女性ではないと言い切れる、の、だが。
その染めた頬も、少し俯いた目も、すべてが可愛らしくて、このまま抱き寄せてしまいたくて…、
「…って、私は何を考えているんだ!」
「み、ミュウツー?」
どうした、と開きかけた口を右手で制する。
こちらが質問を受けている場合ではない。
聞きたいのはこっちの方だ。
「なぜ、その…猫耳を、つけてるんだ?」
一瞬目を見開いた彼は、少しの間目を伏せた。
それから、心なしか疲れている様に見える顔を上げた。
「…罰ゲーム。」
「は?」
「だから、罰ゲームだと…」
「待て。何の、罰ゲームなんだ?」
「…とらんぷ。」
「は?」
「だから、とらんぷ、というゲームだ。
…卿に誘われたから皆とやってみたんだが…意外と難しくて。」
何度も負けてしまってこのざまだ、とルカリオはめずらしく自嘲気味に話す。
それと一緒に、肩をすくめて目を伏せた。
そんな仕草も、見慣れないがなかなか似合っている猫耳のせいで可愛らしくしか見えない自分は重症だろうか。
「ルカリオ。もう一つ…聞きたい。」
「ん?」
「罰ゲームから逃げるのに、なぜ私の部屋へ?」
ルカリオは一瞬固まって、それから少しだけ視線を泳がせた。
至極言い辛そうに、だけどやはり目は逸らしたまま、口を開いた。
「べ、別に…お前になら見せても良いと思ったり、してない、からな。
ただ、自室の次に思いついた逃げ場所がここだっただけ、だ!」
言う前にちら、とこちらを見て、また顔を赤くして。
声を少し荒げた姿から、そう思ったのはバレバレだ。
これは自惚れても良いということだろうか。
「な、何を…」
「…全く、お前は…」
なんて愛しいのか。
困惑する彼をよそに、しばらく抱きしめるのをやめられなかった。
(「それ、似合っているぞ。」)
(「…嬉しくない…」)
(「素直じゃないな。」)
(「う、るさい!」)
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