□もう一人のお姉様
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「ちょっとあんたたち!いつまで寝てるのよ!」
「……めーねー?」
「………今日にちよーだろー……もうちょい寝せて……」


顔にあたった朝の光から逃れるように、布団に潜り込む。すぐ傍で寝てるレンも、ごそごそ動いておんなじようなことをしてるみたい。
だけど、メイ姉は見逃してくれない。


「だぁめ!今日はあの子が来るんだから、早く準備しなきゃ」
「……あの子?」
「新しい家族よ。昨日言ったでしょ?」


……?
新しい?
家族?


「「え――――――っ!?」」


レンとリンは、おんなじタイミングで起き上がった。そんな、聞いてないよメイ姉!


「言ってなかった?」
「うん!」
「初耳」


そういえば昨日はメイ姉とカイ兄、何だか忙しそうだったっけ。それでリンたちが買い物に行かされたんだ。


「そう。じゃあ、今日新しく家族が増えるの。だから準備するために、早く起きてね」
「やっぱりそんなの聞いてない!」
「今言ったでしょ。ほら、さっさと起きる!」


いきなりのことに、レンと文句を言ったりしたけど、でもそれよりも断然期待のほうが大きくて。
どんな人かなって、さんざんメイ姉に聞いたけど、会ってからのお楽しみだって。カイ兄も教えてくれないし、ミク姉はあんまりよく知らないみたい。


そして迎えた、午前10時。時間ぴったりに、ドアベルが鳴った。


「来た!リン見てくる!」
「待ってリン!俺も行く!」
「私もー」
「仕方ないわねえあの子たちは」
「めーちゃんだって、嬉しそうだよ?」
「いいじゃない、嬉しいんだもの」



そして、ドアを開けると。


「はじめまして。巡音ルカと言います」


高い背に、大人っぽい服装。柔らかそうなほっぺたと、紅い唇。そして、桃色の髪と瞳。
わぁ……綺麗。
……っていうか、この人、


「あ―――――――っ!」
「まぁ」


迷子の時にあった人だ!


女の人はにっこり笑った。リンの前にしゃがみこんで、頬を柔らかく挟んだ。くすぐったい。


「昨日の可愛い女の子!リンちゃんね!」
「新しい家族がルカ姉なんて!すごいねっ!あ、ルカ姉って呼んでも良い?」


首を傾げた瞬間、ルカ姉は目を真ん丸にして、


「――かっ、」
「か?」
「かわいい!」


抱きつかれた。


「うぇ!?あ、な?!」
「あらー」
「ルカちゃん……」


後ろから、何だか微妙に笑いを含んだ乾いたメイ姉とカイ兄の声がした。


「小さいかわいい柔らかーい!お姉様お兄様、本当にこんな子と一緒に住んでもいいんですか!?」
「私たちもいるわよ」
「知ってます!二人きりなんて贅沢言いませんわ!」
「……あなた好みの子だとは言ってたけど、ここまで気に入るなんて」
「帰ってきて良かったですわ!」


ルカ姉は、一回ぎゅって抱き締めた後、少しだけあたしを放して目を合わせた。混乱中なのはあたしだけじゃないはず。だって、さっきからレンとミク姉の声がしないんだもの。


「勿論いいですよ!お姉様とお兄様から、リンちゃんのことは前に一緒に飲んだとき聞いていました。よろしくね?」


あたし、いつもレンにさえ子供扱いされるから、その丁寧な言い方に嬉しくなった。


「うん!宜しくね!」
「うふふ。『仲良く』しましょうね」
「「ちょーっと待ったー!」」


突然レンとミク姉が割り込んできた。レンにいたっては、あたしを後ろから抱き締めてる。


「リンは俺んだからな!言っとくけど!渡さねえぞ!」
「違うわよショタ!なんでリンちゃんがあんたなんかのものになんなきゃいけないのよ!」


……ああ、なるほど。二人とも嫉妬しちゃったんだ。かわいい!
来たばっかりなのに、あたしばっかりルカ姉とお話してるんだもんね。二人もルカ姉とお話したいよね。


「ルカ姉、こっちはレンで、そっちはミク姉だよ」


あたしを拘束しているレンの腕を軽く叩いて、ルカ姉とお話するなら邪魔しないから、放してと言ったら、耳元ではあ!?とレンが叫んだ。


「う!ちょっとレン、うるさい」
「あ、ごめん。って、そうじゃなくて!なんで俺が話とかそういうことになるんだよ」
「違うの?てっきり、ルカ姉とリンばっかり話してたからいやだったのかなって思ったけど」
「や、それはそれで合ってるんだけど、微妙にちがうっていうか」

あ"ー!とレンは叫んで、びしぃッ!とルカ姉を指差した。


「とにかく!負けねえからな!」

な、何が?


「…ミクちゃん」


だけど、ルカ姉はレンを見てなかった。
急に名前を呼ばれたミク姉は、


「はい?」


目を丸くして、


「可愛いっ!」


やっぱり抱きつかれた。


「お姉様、私幸せですわっ!」
「ル、ルカさん!?」


その様子を呆気にとられて眺める。


「…レン」
「…ん」
「ルカ姉って、ちょっと変な人だね」
「かなりな」


だけど、


「よろしくお願いします」


仕切り直しとばかりに優雅に礼をして、優しく微笑んだルカ姉に、仲良くできそうな予感がした。

























































20090616


ルカさん登場。天然ですね(笑)
リンは皆から愛されてれば良いです。
めーちゃんとカイトが空気←
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