□マイダーリン
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「みっく姉!」


部屋で髪の毛をいじっていたら、ぴょこんとリンちゃんが入ってきた。


「なあに?リンちゃん」
「暇なの。遊んで!」


あぁ、どうしてこの子はこんなに可愛いんだろう!素直に直接的な言葉を口にするリンちゃん。こんなに可愛い子を独り占めにしようと企むあのショタがとにかく憎いわ!
とりあえず、シスコンショタレバナナは、近いうちに実行する抹殺リストのトップにでもいれておかなきゃね!


「いいわよ。何して遊びたい?」
「ミク姉、今何してたの?」
「え?暇だったから髪のお手入れ」


興味津々に私の長い髪に触れるリンちゃんの細い指。髪に神経が通ってるわけじゃないけど、くすぐったい。


「良いなー、ミク姉髪きれいで」
「そう?」


私はリンちゃんのほうが可愛いし、綺麗だと思うけど。14歳の女の子に「綺麗」は早いかな?でもリンちゃんはときどきすっごく大人びた表情をする。例えば、歌ってるとき。例えば、綺麗な景色を見たとき。例えば、未来を語るとき。例えば。
でもリンちゃんは何を思ったのか首を傾げてとんちんかんな答えをする。


「あ、もちろん髪だけじゃなくってミク姉自身も可愛いよ。優しいし、おもしろいし、だから大好き!」
「ありがと。でもリンちゃんは私よりずっーと可愛いよ。大好きリンちゃん」
「えへへ、ほんと?」
「うん」


くるくると変わる表情が見ていて飽きない。私じゃ、こうはいかないもの。


「でも、ほんとに良いなー。髪。リンも伸ばそうかな」
「そのままでも可愛いと思うけど…。あっ、そうだ。リンちゃん髪巻いてみない?可愛いと思うな」
「巻く?」
「くるくるってするの」
「うん!やってみたい!」


輝いた笑顔で頷くリンちゃんに、私はちょっと悪戯心が疼いた。いいよね?


「ミク姉?」


きょとんとするリンちゃんは本当に可愛い。食べちゃいたいくらい。でも我慢よ、ミク。ここで狼さんになったら今まで培ってきた信頼とか全部崩れちゃうもの。
自制しながら、私はリンちゃんのセーラー服のスカーフを解いた。


「ね、折角だから着替えようよ。おもいっきりおめかしして。どう?」
「え!あ、でも服は?」
「私の貸してあげるよ」


なーんてね。本当はいつか着せたいなーなんてリンちゃん用に買っておいたり作ったりしたものなんだ。ぜーったい、似合うもの!


「ちょっと待ってね」


クローゼットの中から大量にリンちゃん用の服を取り出すと、リンちゃんは目を丸くした。


「すごーい。ミク姉いっぱいお洋服持ってるんだ。全然見たことない服ばっかりだね」
「そ、そう?じゃあ着替えよっかリンちゃん♪」


よしこのノリならいけるわっ!私はリンちゃんのセーラー服に手をかけた。


「えぅ!?ミク姉自分で着替えられるよ!」
「私にさせて!今日はリンちゃんの全身コーディネーターなんだから!」


華奢な肩がセーラー服の下から現れたその時。


トントン、ガチャ。


「なーミク姉リン知らな………」


間の悪いことにショタ登場。瞬時に殺気が沸き上がる自分に驚くわ!


「…………」
「…………」
「あ、レンだ。お帰りー」


ああそういえばショタ収録だっけそれでリンちゃん私の所に来たのかなんて悲しい現実を認識すると同時に、シスショタも現実を認識したらしい。


「お、おまっ、何やってんだよ!」


慌てて私とリンちゃんの間に割り込む。あぁさようならリンちゃんたった1メートルの別離でもリンちゃんと触れ合えてたさっきまでの時間を思い出すと切ないわ! それもこれも私がリンちゃんを襲ったと勘違いしてるこのショタが悪いのよ!
こんなことなら本当に襲っとけば良かったなぁ。


「この百合葱女!俺のリンを百合に巻き込むな!余所でやれ余所で!」
「あらあらなんのことかしら?私とリンちゃんは楽しく遊んでいたのに邪魔しないでくれる?」
「なんの遊びだこら」
「なんの遊びでしょうねー?」


わざとらしく明後日の方を向くと、ぎりっと歯を食い縛る音がした。流血沙汰にしないだけ感謝してほしいわ。もちろんリンちゃんの前だからだけど。


「ねーちょっとレン!」


リンちゃんがショタの服の裾を引っ張った。ショタは振り向くけど、リンちゃんは上半身がほぼ下着姿で正視できないみたい。


「な、なんだよ。つーか早く服着ろ!」
「え?何でよ。これからミク姉とおめかしして遊ぶんだから、早く出てきなさいよ」
「おめかしぃ?」


ショタはばっと振り向いて騙しやがったな葱女と低い声で囁いた。もとはリンちゃんと同じ声のはずなのにこの違いはなんだろう。ぜんっぜんかわいくないわ。


「騙してないわよ。勝手に勘違いしただけでしょ?ほら、早く出ていってよ。レディの着替えを覗くつもり?」
「はっ、誰がレディだよ」


それでもばつが悪そうに、悪かったよとつぶやく素直さはリンちゃんと確かに双子なんだろうな、と思う。あーむかつく。


「あ、レン!」
「あんだよ」
「そんなに凹まないの、後で構ってあげるから」


構ってほしくて双子の弟が乱入したと思っているリンちゃんの考えは、見当違い。でもそういうところも可愛くてしかたない。

リンちゃんが大人びた表情をするとき、それは、例えば、歌ってるとき。例えば、綺麗な景色を見たとき。例えば、未来を語るとき。例えば。

――例えば、リンちゃんが片割れを見るとき。

今も、すごく綺麗で、悔しくなる。
でも幸いなことに、それはまだ姉としての表情の方が大きいみたいだから、安心ね!


「リンちゃん」
「何?」
「大好き」
「リンも!」


リンちゃんは私が守るわ!
































































20090606



ええと……。ミクの抹殺リストってレンの他に誰が乗ってるのでしょうか←
というかミクはどれだけレンのこと嫌いなんでしょう。全く名前で呼んでませんよ。途中であれミクってレンのことどう呼んでたっけとなりました。きっとこの二人は日頃からニックネーム(?)でしかも青筋の浮いた笑顔で呼びあってるんですよ! そんでリンが二人だけずるーいとかって意味も全くわからずに百合葱ーとかショタレーとか呼ぼうとするんですよ。あー可愛い。

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