07-GHOST

□星に願いを、君に想いを
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ハルセが笑わなくなってもう1ヶ月が経つ。




「――ねぇ、」



僕は何度も何度もハルセに逢いに行く。その度にぐるぐると思い返されるあの場面。なぜ、どうして。後悔だけが僕を蝕んでいく、そんな毎日の繰り返し。

時間を巻き戻されて、一向に前には進まない。そんな淡白で永久的な世界。

ハルセがいないぽっかりと空いた僕の心は、それをどうしたらいいのか分からなかった。ただ分かることは全てがミカエルの瞳のせいだったということだけ。



「………起きてよ」



遠くを無機質に見据えるように見えるハルセは、結局、目を開けていようとも、その瞳には何も映ってはいなかった。この僕でさえも映りはしない。


それは、目だけじゃない。今のハルセには僕の声もきっと聞こえていないのだろう。

脱け殻のようなその姿はまるで、魔女に魔法をかけられた眠り姫のようだとも思う。



「――起きて、ハルセ」



縋るようなキスを、頬に落とす。もう何度目かはわからない。奇跡を信じて毎日毎日キスをした。ハルセが目醒めることを祈って。


それでも魔法は解けることはない。その度に込み上げてくるのは、失望感。絶望感。

ハルセにかけられたのは魔法ではなく、間違いなく呪いだった。あれは神でも魔法使いでもない。悪魔だったんだ。そう確信めいた事実に涙が溢れ出る。



「ハルセ。ハルセ―……」



一生懸命みんながハルセを救う方法を探してくれているけど、僕の中では焦りと苛立ちと寂しさだけが、時間が経つにつれてみるみるうちに膨れ上がっていく。

ハルセはいつも僕のために何だってしてきてくれたのに、僕はハルセに何もすることができないなんて。そんな自分のちっぽけな存在に打ち拉がれる。それでも、諦めきれなくて足掻き続けるのはハルセが、僕にとってかけがえのない人だから。




「………ねぇ、ハルセ」












ハルセに聞いてほしいことがあるんだ。









――起きてよ、起きて。











ハルセがいないと寂しいよ。つまらない。









――起きてよ、起きて。









離れてみて改めて分かったんだ。僕にとってハルセがすごく大切な人なんだって。










――起きてよ、起きて。










だから、お願い。早く起きてよ。そうしていつもみたいに僕を抱き締めて安心させてほしいんだ。












――起きてよ、お願い











「早く、起きてよ。ハルセ……」





届かない声。それでも届いてほしくて、僕は声に、想いを、願いを、全て詰める。早く起きて、と。


これだけが、今僕がハルセに出来る精一杯の――。









星に願いを、君へ想いを
(何もできない自分を捧げる)








――助けてください。神にそう祈ったのに、神は救いの手を差し伸べてはくれなかった。理由は、僕が"異端者"だったから――






10,02,02(TUE)


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