07-GHOST

□君の傍にありたいと思う
1ページ/1ページ







(――まだ、大丈夫)


目には見えないぼろぼろになった身体を引き摺って、それでも俺はいつものようにアヤたんの部屋へと向かう。身体は重いが、気分は軽い。




(――行かなくちゃ。行かなくちゃ)




その想いだけが俺を突き動かしていく。切れる息。霞む視界。ただ廊下を歩いているだけの乱れる世界は、俺の限界を告げていた。


闇が内側から、身体を、心を、蝕む。それは分かり切っていたこと。俺はただの"黒法術士"であって、選ばれた人間ではない。

脇差に物質附加という形をとって黒法術の力を最低限に留めおいてきたのも、一日でも一秒でも長くアヤたんの傍で仕えられるようにするため。いつかは迎える終焉を少しでも未来へと押しやるそんな悪あがき。

――それでもやっぱりやってくる確実な終わり。残りの時間は、少ない。




(死ねない。まだ、死ねない)




タイムリミットが目前と迫っているからこそアヤたんを1人にはさせたくない。それは俺のエゴ。

ユキカゼが死んでから、――いや、それ以前から――、アヤたんは極端に誰かを傍に仕えさせることを恐れている。

――最愛の喪失。心の中央にぽっかりと空いた深淵から湧き出る冷たくて苦い水は、ひたひたと溢れアヤたんを飲み込んでしまった。閉ざされた世界に誰も立ち入ることができない。傷は腐敗していくばかりで完全に癒えることもないのだろう。だからこそアヤたんの"隣"は今も見つかってない。小さな世界にただ一人。アヤたんは生きてきた。


そんなアヤたんの世界に今、罅が入りはじめている。俺がユキカゼみたいにアヤたんの拠り所となっているかと言われたらはっきりとは分からない。それでもあのアヤたんが俺に少なくとも背中を預けてくれているということだけは分かる。

俺は今、アヤたんの心の一部に踏み入れてしまっているのだ。


気がつけば、いつのまにかそうなっていた。だからこそ、だからこそ、





(俺が、出来る、こと――)




今という時間を満たしてあげること。次の出会いのために冷え固まった心を少しでも溶かしておいてあげること。何よりも本当に隣に立てる人間が現れるまで、生きぬくこと。


せめて、それまでは――。








君の傍にありたいと思う
(この意思だけが私を留めおく)






(大好きだよ、アヤたん)


(言葉には、絶対にできないけれど)


(それでも、大好きだよ)







――代わりが見つかるまで俺は、生きよう。君の心の傷がほんの少しでも浅くすむように――












リクエストありがとうございました!!年始早々暗いっ、と自分で突っ込んでしまいましたがアップを。こんな死フラグが立っていてもうしわけないです。しかもアヤたん、出てきてないという展開(焦)


そんな中、今年はアヤヒュウにしてもヒュウアヤにしてもしっかりとした定位置で書いていきたいなぁ、と思っていたりします。……できる限りですが。
そんな想いをこめた一作品目。ヒュウガの脇差の物質附加についてちょっとだけ触れてみた感じです。←注)あくまでも私の妄想ですが……




10,01,05(TUE)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ