短編集
□恋愛に日数なんて関係ない
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「はあ……」
坂本零は椅子を傾けてだらしなく座りながら青空を見て溜め息をついていた。
「どーしたのっ? 零」
零に、親友の本坂胡桃が元気に話し掛けてくる。胡桃の横には顔がきれいに整っている長身の男、滑川海もいた。
「アンタはいいよね〜。かっこいい彼氏がいるんだから」
高校受験も終わり、卒業が近づいてくる。
人見知りもすっかり直った胡桃は以前よりも活発になったようだ。それはきっと彼氏の海のおかげなのだろう。
「あははっ! いいでしょっ」
「胡桃、お前な……。でも、零は美人なんだから、作ろうと思えばすぐに彼氏作れるだろ?」
海は優しい目をして胡桃の頭を軽く小突くと、あっさりそう言った。
零は中学三年間で数え切れないほど告白されている、という噂は他の学年にまで知れ渡っている。しかし、そんな彼女は憂鬱そうに机に肘を乗せた。
「実際そう上手くは行かないのよ。あたしの理想の男がいないから」
「へぇ〜。零の理想ってどんな人なの?」
「美形で背が高くて金持ちで優しい人」
零は正直に述べてみる。
彼女自身、そんな男が実際にいるなんて思ってもいない。
「そんな奴、いねえだろ!」
「いないでしょっ!」
零に胡桃と海が同時に突っ込んだ。
付き合っているだけあって、息もぴったりなのだろうか。
「やっぱり無理?」
「ああ」
「うん」
彼らは簡単にそう頷くと、零は重ねて溜め息をついた。
「……あたしには一生、彼氏は出来ないんだろうな」
零は一人そう呟いた。
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