本編いち

□プロローグ
1ページ/2ページ




『音は宝物である』
木に彫られたその言葉は、堂々とした姿でこの教室を見ていた。

高等学校なのに大学まであることで有名な青蘭学園高等学校で、学校一新しく、学校一広く、そして学校一神聖と言われている部屋の一部の壁。そこには誰もが見たくなくてもわかるくらい大きく、その文字が刻まれた彫刻が掲げられている。



「ひとつ!挨拶はしっかりと!」

彼らの活動は朝7時から行われる朝練から始まる。
音楽部の部長である丘ノ宮奏為(おかのみや かなた)の声が響いて、それを反復するように、副部長の垣内透(かきうち とおる)と枢雄哉(かなめ ゆうや)、それから一般部員の美濃優希(みの ゆうき)と春日雛(かすが ひな)も声を響かせた。

「ひとつ!挨拶はしっかりと!」


ひとつ、人や物を大切に。
ひとつ、嘘や隠し事は禁止である。
ひとつ、部員は一生の仲間である。
ひとつ、音は一生の宝物である。

部の教訓として掲げられたその五つを復唱することで、音楽部の一日が始まると言っても過言じゃないだろう。

今日もほら、活動が始まった。


音に染まった世界の中で……





_
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ