ギンイヅSS

□透き
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翌日、俺はたまたま三番隊舎に赴く事になった。
大した用事ではない。
ただ書類を届けるだけの、小用だった。
三番隊舎の廊下を歩いていると、吉良の声が聞こえた。
どうやら執務室からのようだ。
「吉良がいるのか。よかったぜ」
俺は胸を撫で下ろす。
市丸はどうも苦手だ。
「…隊長…止め…」
廊下に途切れ途切れに聞こえてくる声。
俺はその時、妙な感じがしたのを憶えている。
昼間なのに静まり返り、誰も居ない廊下。
それはまるで隊員達が訳あってその場所を避けているようであった。
「もう、お許し下さい」
再び聞こえてきた吉良の声。
それは許しを請う、叫びにも近いものだった。
相手はおそらく隊長の市丸だろう。
何か失敗でもして制裁をうけているのだろうか。
嫌な予感がしながらも、俺は執務室の扉の隙間から、室内を窺い見た。
「…!」
それは我が目を疑う光景だった。
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