ギンイヅSS

□神鳴り
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相変わらず遠くで雷が鳴っている。
僕は何だかぼんやりしてしまって、雨の雫を見ていた。
窓を伝うふたつの雨粒は、ひとつになりそうでひとつになれない。
硝子を滑り、離れ落ちていく様は、まるで…
「いやあ。こら、あかん」
その時、窓が勢い良く開かれ、雨粒と共に誰か室内へと飛び込んで来た。
「…!」
あまりのことに声も出ない。
驚いて動けずにいる僕を見て、その人は微笑んだ。
「イヅル、何しとるん」
「市丸隊長!」
そこにはすっかり濡れてしまった隊長が立っていた。
「隊長こそ、何をしてらしたんですか!ずぶ濡れじゃないですか」
「お散歩しとったら、雨が降ってきてん」
「は、早く!早く拭いて下さい」
僕は手拭いを差し出すと、隊長に駆け寄った。
風邪でもひかれたら大変だ。
「イヅルは大袈裟やなあ」
額ひとつ分背の高い市丸隊長に、僕は背伸びをして髪を拭く。
されるがままになっている隊長に、僕は半分呆れていた。
本当は言いたいことがたくさんある。
仕事をさぼらないで下さいとか、窓を開けたままにしないで欲しいとか。
でも柔らかな髪や市丸隊長の霊圧に触れていると、だんだんそんなことはどうでもよくなってきてしまった。
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