ギンイヅSS

□透き
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吉良の首筋に痣を見つけたのは、ふとした拍子だった。
着物の衿と襟足の髪に隠れて、気を付けないと分からない場所だ。
おそらく吉良自身も気付いていないだろう。
小さく、だがくっきりと赤い点が白い肌に浮かんでいた。
「お前、これどうした」
虚討伐の際にでもつけた傷かと思い、俺は何の気なしに訊ねた。
「え、何?阿散井くん」
俺は痣を人差し指で突付く。
「ここ、赤くなってるぞ」
「え?あ…」
吉良は俺が指差した所に手を当てると、何か思い当たったようだった。
「なんでもないよ」
頬を染め、首を振る。
俺はその時、それが怪我かせいぜい虫刺されだろうくらいにしか思っていなかった。
だから吉良が痣を手で隠しながら、妙に嬉しそうにするのが不思議でならなかった。
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