ギンイヅSS

□神鳴り
1ページ/4ページ

その日、日暮れ近くになって遠くに雷鳴が聞こえだした。
「雨が降りそうだな」
僕は呟くと隊首室へと向かった。

「失礼します」
ドアを叩き声をかけて入るが、室内に市丸隊長の姿はない。
いつものことながら、仕事を放り出して、どこかへ行っているようだ。
「隊長ー!」
どこかに隠れていやしないかと、声を張り上げる。
しかし返事はない。
代わりに窓の外で雷鳴が轟いた。
「わあっ」
開け放しの窓からは、雨の降る前兆だろう、強い風が吹きつけ、手付かずのまま積まれていた書類の束が舞い上がった。
「大変だ。早く拾わないと」
屈んだ側から一層強い風が吹き、同時に雨粒までもが室内に落ちてくる。
いよいよ本格的に降り出したようだ。
慌てて窓を閉めると、散らばった書類を拾い集める。
「なんとか大丈夫そうだな」
元どおり机の上に書類を束ね終わると、外はすっかり雨模様だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ