十三姫物語
□力の後退
2ページ/5ページ
声のした方を見ると、ユーナロフが入ってきたところだった。
「ユーナ兄さん、これは…?」
フィンディニアの静かな問いに、ユーナロフははっきりと言い放つ。
「天子様が墜ちられた。」
港の王都から一番遠い町、シルフィ。
国一番の港で、神から許しを得たものと貿易が出来る唯一の町。
「…あらあら、また来たの?」
女性の足下には希少種の猫、ウィグリスの赤ちゃんがすり寄っている。
大人になると大きな翼が生え、背中には人間を30人ほど乗せることが出来る。
昔は移動手段としてそこら中で見ることが出来たが、密輸組織により数が減ってしまった。
ウィグリスはティーラ国から出ると死んでしまう。
天子様の結界の中でしか生きられないのだ。
希少種に認定されてからは、王城のさらに奥にある空中庭園で保護されている。
「あなた、ここにいたら危ないわよ?
空中庭園に母親がいるでしょうに…。」
逃げ出したのか間違いで出て来てしまったのか、理由はともかく状況はかなり危ない。
今もどこでウィグリスを狙っているのか分からないのだから。
「あっ…あんたっ!!」