十三姫物語


□力の後退
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声のした方を見ると、ユーナロフが入ってきたところだった。


「ユーナ兄さん、これは…?」


フィンディニアの静かな問いに、ユーナロフははっきりと言い放つ。


「天子様が墜ちられた。」








港の王都から一番遠い町、シルフィ。


国一番の港で、神から許しを得たものと貿易が出来る唯一の町。


「…あらあら、また来たの?」


女性の足下には希少種の猫、ウィグリスの赤ちゃんがすり寄っている。


大人になると大きな翼が生え、背中には人間を30人ほど乗せることが出来る。


昔は移動手段としてそこら中で見ることが出来たが、密輸組織により数が減ってしまった。


ウィグリスはティーラ国から出ると死んでしまう。


天子様の結界の中でしか生きられないのだ。


希少種に認定されてからは、王城のさらに奥にある空中庭園で保護されている。


「あなた、ここにいたら危ないわよ?


空中庭園に母親がいるでしょうに…。」


逃げ出したのか間違いで出て来てしまったのか、理由はともかく状況はかなり危ない。


今もどこでウィグリスを狙っているのか分からないのだから。


「あっ…あんたっ!!」
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