十三姫物語
□語り歌
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『―――いいだろう。』
その時、かすかに声が聞こえた。
だんだんしっかりとした声が、頭に降ってくるように響き渡る。
『そなたの心は確かに受け取った。
しかし我のもとに来るのは許さぬ。
我にはたくさんの子がおる故、もう増えるのはたくさんだ。』
まるでめんどくさそうに呟く。
『そなたに力を与えよう。
その力で自らの願いを叶えよ。
我はいつもそなたの中にいる。
その事を忘れずこの世界に真の平和が訪れたとき、そなたの時は永遠に止まるであろう。』
救いの声にすがるように手を合わせる。
「ありがとうございます。
…神よ…ありがとうございます…。」
女性は涙を流しながら神に感謝した。
天から一筋の光が燃え上がる家に降り注ぎ、女性のもとに集まった。
途端に家を燃やし続けた炎は消え、焼け跡すら残らずにもとの家に戻った。
確かに先程まで燃えていた家が、いきなりもとに戻ったのを目にした家臣達は怯えて逃げ去った。
王は逃げ帰った家臣達の話を聞き、信じられないと思いながらも女性のもとへ向かった。
しかし何もなくなった野原に愕然とした。
女性の名は月(ゆえ)…。
時代が流れた今も、どこかで人に混じりながら世界を見ているという――。