十三姫物語
□語り歌
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誰もいない町に1人の少女がいた。
髪はもう何年も櫛でとかしていないような、みるも無惨なひどいありさま。
瞳は何も映してはいないように濁っている。
着ている服でさえボロボロの布を継ぎあった程度の布。
小さな町は家だけたったままで、野は焼け池は渇き、湖には魚の死骸が浮いている。
大人は町を出て、子は死に絶え、動物も植物もない。
女の子は祈った。
「神よ、この町をお救いください。
神よ、世界を平和にお導きください。
神よ、人に幸せの光をお与えください。
どうか神よ、私の願いをお聞き入れください。
どうか…神よ…。」
女の子は毎日祈った。
食べ物を探しに町を出ても、必ず町に戻っては自分の家だった場所に花をそえた。
そんな毎日を過ごし、10年余りが過ぎた。
そして女の子はとても美しい女性へと成長した。
隣国の国々から求婚の話が来るほどに、女性の話は有名になった。
しかし女性は断り続けた。
「この地を離れるつもりはありません。」
ある晩、女性の家に火が放たれた。
己のものにならない女性に焦がれ、他の男のものになるくらいならと狂った王が、家臣に命じたのだ。
女性は逃げなかった。
火に包まれた家の中で、ひたすら神に祈った。
「私のせいで世界がさらに平和から遠のくのならば、私は命を捧げ、神のもとへ参りましょう。
ですからどうか、私の願いをお聞き入れください。」