□背徳者
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ザァザァと激しい雨粒が窓を打つ。



季節は冬。12月23日の夜。
空は落ちてきそうな程の星々ではなく、どんよりとした闇色で彩られ、絶えず雨粒を落としていた。

降り続く雨は風とともに凄さを増し、寒さをいっそう厳しくした。



そんな中、一台の車が雑木林に止まっていた。











背徳者











「バーティミアス、お前のせいだぞ」


後部座席に足を組んで座るジョン・マンドレイクは、妖霊に向かって苛立たしそうに言った。

運転席にいる妖霊、バーティミアスも怒気を含めて言い返す。


「知るか、何で俺のせいなんだよ!」


バーティミアスは運転するため、今はいつもの褐色の肌のエジプト少年ではなく、エジプトの青年姿をしていた。


「僕はガソリンが足りなくなるから補給しておけと言っただろう、なのにお前が言うことを聞かなかったせいだ!」


すぐさまマンドレイクに言い返され、バーティミアスは負けじと大きな声を出して対抗した。


「だからなんだ!足りる筈だったんだよ、お前が寒いだのなんだの言って暖房入れなきゃな!」


確かに雨が降り出し、気温が下がりはじめた頃マンドレイクが暖房をつけろと言った。

そして元々満タンではなかったガソリンが底をついてしまい、数分前に車は動かなくなった。



「お前はそれを想定してガソリンを足しておくべきだったんだ!」


「んだと!」



マンドレイクはふるりと震えた。それはバーティミアスの怒鳴り声のせいではなく、寒さのせいだ。
車内の温度は徐々に下がっていた。



「……もういい。これからどうするかだ」


少しでも暖を、とマンドレイクは自分の体を抱き締めて言った。

バーティミアスは話を切り替えられて不服そうに舌打ちをして前を向き、車のフロントガラスに打ちつけられる雨粒を眺めながら聞いた。



「どうするんだ」



「どうするって…そうだな、とりあえず暖かい所に行きたい。あとガソリンを手に入れなくちゃならない」


「暖かい所ってどこにあるんだよ」


バーティミアスに溜め息をつかれてムッとしたマンドレイクはポケットから占い盤を取り出した。
赤ん坊インプが入った小さい頃のお手製の占い盤だ。


「あぁ、やっと僕を出す気になったの?」


高い声で喚かれてマンドレイクは不快そうに顔を歪めた。


「使いに出す気にはなったがな」


「え」


「命令だ、この車から一番近い建物を探し、報告しろ」


「建物ってどんな?」


「いいから行け。遅ければ罰を下す、覚悟しておけ」




全く人使いが荒いったら、などと言いながら消えたため最後の方は尻すぼみだった。

『人』使いというより『妖霊』使いだろう、とバーティミアスは思った。

さっさと命令をし終えたマンドレイクは自身を再び抱き締めた。寒いのだろう。



「………で、お次は何でございましょう、ご主人様」


バーティミアスは皮肉るような笑いを浮かべて言った。






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