短編集

□夏が来る
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………夏が来る…夏が来る……夏が来る……夏が来る。










「けーいー!!!アイス食べよ!!」




汗ばんだ頬をぬぐって、思いっきり遠くに手をふる。






「はしゃぎすぎだろ!夏月、何味食べる?」







この夏は、一度きりしかない。それを、精一杯生きるのだ。






圭がいるから。












………夏が来る…夏が来る……夏が来る……夏が来る。










圭のいた…夏が来る









いなくなった。










そして誰も。










「じゃあな、夏月。」










「……っ……ぅ…」










終わった。
世界が終わる。
ゆらゆらと陽炎がゆれてる。










夏が終わる。
終わった。

もうアイスなんて食べたい時期ではない。










「何味?」




なんて、聞かれることも無くなった。

















「ばいばい!!!!!」









大きく手を振りながら、叫んだ夏の終わり。









望んでこうなった世界ではない。










「世界に美しさなんて無いんだよ。人の中もね。」



「中?」



「心だよ。」



「ふーん。」
















人の中に綺麗なものがあるほど、穢れた中が潜んでいるって。










圭もそうだったの……?










穢れた中に埋まった私の時期が来る。













夏が来る、終わりを告げたあの日が
 

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