H×H

□STRAWBERRY&LION
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 毎朝の朝食は、私の係。


 朝、起きて、顔を洗って、‥たまにはシャワーも浴びたりして、真っ先に取り掛かる、仕事というか、もはや、日課。



『あ、おはよう、キルア』


「ん、おはよ‥」



 私よりも、大分遅れて、同居人の起床。



 いつもは、私が起こすのだけど、今日は、珍しいな。寝覚めが良かったらしい。



『シャワー、浴びてきな。ごはん、できてるから』


「うん。‥あ、そうそう」



 素直に頷いて、シャワールームに向かう足を、くるりと反転。カウンターを回って、キッチンに入ると、お弁当を用意している私の真正面に立つ。



『どうし‥‥‥むっ?』



 急に腕を引かれ、食べるようなキス。


 無防備に開かれた唇から、キルアの小さな舌が割り込んでくる。逃げようにも、キルアの掌が、私の後頭部に当てられて、どうしようもなかった。



『む、‥‥んぅ‥ん、はっ‥』



 温かく濡れた舌が、絡まって貪って、年下のくせに、どうして、こんなにキスが上手いんだろう。



 いや、それよりも、不思議なのが‥



『‥んぁ‥、はっ‥』


 やっと解放されて、呼吸を整えて。


『どうして、キスがイチゴ味なのよ』



 墜ちそうになる膝をなんとか立たせて、キルアを睨むと、当の本人は、赤い舌を見せて、にやり。



「美味しかった?昨日、発売されたばっかなんだぜ、このストロベリーキャンディー」



 そう言うキルアの舌に乗っていたのは、小さなピンク色の欠片。



 朝っぱらから、甘ったるいこと。



 イチゴ味の舌で、もう一度、今度は唇を舐められる。



「昨日のお返し。バレンタインの」



『ホワイトデーは、一ヵ月後よ』




 溜息混じりに言うと、キルアの猫みたいな瞳が細くなる。少しだけ、大人びた表情。私の耳元に、唇を寄せて。



「そ。

 だから、ホワイトデーはもっと良いモノあげる。期待してていーよ」




 そう、息を吹き掛けるように囁くから、今まで耐えてきた私の膝が、とうとう崩れ堕ちてしまう。



 座り込んだ私を見て、キルアは満足そうに笑った。



「ま、オレは、ビターチョコよりも、スウィートチョコ派なんだけど、今年はクラピカに譲ってやるよ。

 年功序列ってやつ?

 オレ、奥ゆかしーからさ」


 腰の抜けた私を見下ろして、キルアはゆっくりと近付いて、もう一度、唇を重ねた。


『‥ふ、ぁ‥ん、‥んむ‥は‥』



 頭が痺れて、甘いその味を楽しむ余裕なんて、既にない。



 キルアのシャツに縋り付きたいところを、年上の意地で、ぐっと我慢。


『ん、ん、‥‥ぁ‥はぁ‥』


 キルアは唇を離すと、肩で息をする私を置いて、軽やかな足取りで踵を返す。



 キッチンを出る直前で振り返り、キルア独特の、得意気な笑顔。




「覚悟しとけよ。

 来年は、スウィートチョコで作らせてやる」






end

 

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