H×H
□STRAWBERRY&LION
1ページ/1ページ
毎朝の朝食は、私の係。
朝、起きて、顔を洗って、‥たまにはシャワーも浴びたりして、真っ先に取り掛かる、仕事というか、もはや、日課。
『あ、おはよう、キルア』
「ん、おはよ‥」
私よりも、大分遅れて、同居人の起床。
いつもは、私が起こすのだけど、今日は、珍しいな。寝覚めが良かったらしい。
『シャワー、浴びてきな。ごはん、できてるから』
「うん。‥あ、そうそう」
素直に頷いて、シャワールームに向かう足を、くるりと反転。カウンターを回って、キッチンに入ると、お弁当を用意している私の真正面に立つ。
『どうし‥‥‥むっ?』
急に腕を引かれ、食べるようなキス。
無防備に開かれた唇から、キルアの小さな舌が割り込んでくる。逃げようにも、キルアの掌が、私の後頭部に当てられて、どうしようもなかった。
『む、‥‥んぅ‥ん、はっ‥』
温かく濡れた舌が、絡まって貪って、年下のくせに、どうして、こんなにキスが上手いんだろう。
いや、それよりも、不思議なのが‥
『‥んぁ‥、はっ‥』
やっと解放されて、呼吸を整えて。
『どうして、キスがイチゴ味なのよ』
墜ちそうになる膝をなんとか立たせて、キルアを睨むと、当の本人は、赤い舌を見せて、にやり。
「美味しかった?昨日、発売されたばっかなんだぜ、このストロベリーキャンディー」
そう言うキルアの舌に乗っていたのは、小さなピンク色の欠片。
朝っぱらから、甘ったるいこと。
イチゴ味の舌で、もう一度、今度は唇を舐められる。
「昨日のお返し。バレンタインの」
『ホワイトデーは、一ヵ月後よ』
溜息混じりに言うと、キルアの猫みたいな瞳が細くなる。少しだけ、大人びた表情。私の耳元に、唇を寄せて。
「そ。
だから、ホワイトデーはもっと良いモノあげる。期待してていーよ」
そう、息を吹き掛けるように囁くから、今まで耐えてきた私の膝が、とうとう崩れ堕ちてしまう。
座り込んだ私を見て、キルアは満足そうに笑った。
「ま、オレは、ビターチョコよりも、スウィートチョコ派なんだけど、今年はクラピカに譲ってやるよ。
年功序列ってやつ?
オレ、奥ゆかしーからさ」
腰の抜けた私を見下ろして、キルアはゆっくりと近付いて、もう一度、唇を重ねた。
『‥ふ、ぁ‥ん、‥んむ‥は‥』
頭が痺れて、甘いその味を楽しむ余裕なんて、既にない。
キルアのシャツに縋り付きたいところを、年上の意地で、ぐっと我慢。
『ん、ん、‥‥ぁ‥はぁ‥』
キルアは唇を離すと、肩で息をする私を置いて、軽やかな足取りで踵を返す。
キッチンを出る直前で振り返り、キルア独特の、得意気な笑顔。
「覚悟しとけよ。
来年は、スウィートチョコで作らせてやる」
end