H×H
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平日の夕方だった。
特に何かあるわけでもない、平日の授業後。
ポンズは終了ベルと同時に教室を出て行ってしまったし、キルアは、今日は仮病で休み。
ポンズは彼氏の所だろう。多分。確実に。
クラピカはお仕事だし。
つまらないなあ。
溜息を吐くけれど、状況は変化しない。当たり前か。
さあ、これからどうしようかな。
空白という素敵な時間の過ごし方を考えながら廊下を歩いていると、正面から長身の二人組が近付いて来た。
広く長い廊下の先でも、すぐに判別出来る、異質な空気。
『うえ』
わざと眉毛の間に皺を作って、舌を出す。
二人の視力は私を認識してしまったらしい。
「やあ◆レイン」
歩く動作はそのまま、歩行速度だけを上げて、ヒソカが私の目の前で立ち止まった。
「一人かい?」
『そ。
あんたは、珍しいの連れてるんだね』
ヒソカが通った廊下を、かなり遅れて男が歩いてきた。
サラサラの黒いロングヘアをなびかせてゆっくりと近付いてくる様は、‥シャンプーのCMかよ。
「や、久しぶり」
私に興味があるんだかないんだか、イルミは焦点の判断し辛い顔で左手を挙げた。
『なに、部外者が勝手に入ってきてるの』
「ハンターなら出入り自由って聞いたから。
じゃあ、ヒソカ、また後で」
本当にヒソカを見ているのかは分からない表情でヒソカを見て、イルミは手を振らずに通り過ぎる。
すれ違う瞬間の血の匂いが、キルアとの関係を再認識させた。
『待ってよ。
聞かないの、キルアのこと』
「キルのことは、キミに任せてあるから。
それに、簡単に病気するような身体の作りはしてない筈だよ」
その通りだ。だから、キルアの仮病はバレバレなんだ。
イルミは立ち止まりもせずに、そのまま廊下の向こうへと消えてしまう。
二人きりになった途端に肩を抱いてくるヒソカを置いて行かないで欲しかったと、心底、思った。
『イルミ、行っちゃったよ』
「そうだね◇」
『良いの、追っかけなくて』
「くく◆やきもちかい?」
『あんたが燃え尽きてくれるのなら、いくらでも焼いてあげるんだけど』
常人よりも太い手首を掴んで、がっしりと捕まえられた肩を解放する。解放された肩には赤く痕が残ったが、骨には異常はなさそうだ。
「良いんだよ◇頼みごとは済んだしね」
不穏な言葉に、私は『ふぅん』とだけ相槌を返す。
この二人がタッグを組むと、良いことはない。
『あんたたちが何を企んでも自由だけど、私とキルアを巻き込むような真似だけはしないでね』