H×H
□cat
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「どうしたのだ、その手の傷は」
食後の一時。コーヒーを飲みながらクラピカが言った。コーヒーは私が淹れたものだ。
『ああ、##NAME2##にじゃれつかれて』
自分の左手を確認して、隣の私は紅茶を一口。うーん、よく見ると、細かい切り傷や咬み傷が赤い痕になっている。ひどいな、こりゃ。
「##NAME2##?」
大きな瞳で私を見るクラピカ。あ、この表情、猫みたい。ちょっぴり笑いが込み上げる。
『うん、まだ小さいから、遊びたい盛りなんだと思う』
「ふうん、遊びたい盛り‥‥か」
呟いて、クラピカは私の左手を取った。まるで、珍しいものを見るみたいに。実際、子猫の傷が珍しいのかも知れない。子猫は爪や歯が薄いから、傷は深くはならないけれど、皹みたいにヒリヒリするんだ。
指先から手首までを一頻り観察したクラピカは赤い舌を出す。ペロリ。
『んひぁっ!』
思わず上擦った声を上げる。だっていきなり舐めたよこの人。しかも指の間の柔らかい所は反則でしょう。
『ちょっ‥‥クラピカっ!なにして‥‥んっ』
「私も、遊びたい盛りなのだよ」
『なに言って‥‥やんっ!』
赤く湿った舌で私の手の傷を辿るクラピカ。一つ一つ、確認するように。
温かな感触が指先に達すると、そのまま啌内に含まれてしまう。吸われながら爪先をなぞられて、全く関係ないお腹の奥がずくんと疼いた。含まれたままの指先を、クラピカの歯が柔らかく挟む。舌で指を包むように根元まで降りて、今度は唇で扱くように。唇と舌を駆使した動きは私がクラピカにしてあげる時みたいで、喚起された記憶に身体中の血管がどくどくと鳴った。
『んぁ‥‥んっ!』
「‥‥ん、‥‥どうした?」
抑えられない喘ぎに、クラピカはぬるりと指を解放した。私の掌を舐めて、笑う。それは私の体温の上昇を見透かしたような笑顔で、悔しくて恥ずかしくて、私は顔を背けた。『別に』なんて、強がりでしかない。
もっと素直に、貴方を求められたら良いのに。
真っ赤な顔は見られたくなかったけれど、クラピカの指に顎が掴まれてしまう。ほら、簡単に捕らえられる。目の前の真っ赤な双眸に私の視線は釘付けだ。
食べられるようなキス。唇を割って侵入する舌は、私の唾液の分泌を促して、ぴちゃぴちゃとはしたない音を立てる。
まるで、ミルクを舐める子猫みたい。
ちろちろと唇を舐められて、「欲しくなったのか?」
ばればれだね。お腹が空いてるのは私の方。
でもね、駄目。認めるわけにはいかないの。残った理性を動力にして、首を横に往復させる。
「そうか、なら‥‥」
全てを見透かした紅い目の獣は、その美しい唇を歪めて囁いた。
「もっと、‥‥‥噛みついてやる」