Baby,sing a song.

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 リビングの皆さんは、私たちを心配そうに出迎えてくださいました。


 そんな顔をなさらないで下さいな。



 私は大丈夫ですよ。



 ‥‥蔵馬さまも。




 皆さんのお顔を順番に見回し、深呼吸を1つ。



『ところで、皆さんは、蔵馬さまのことを、どう思っていらっしゃいますの?』



 私は、蔵馬さまの仲間だと仰るこの方々に、ほんの少し、お時間を頂くことにしました。



 皆さんは、目を丸くして私を見ていらっしゃいます。



 当たり前、ですよね。



 こんな時に、何を悠長なことを言っているのか、といったところでしょうか。



 でもね、気になるんです。



 黄泉さまを裏切った蔵馬さまが、一体、どうやって生きてきたのか。



 何を、手に入れてきたのか。




『難しい質問ではありませんよ。

 蔵馬さまに生きて欲しいかどうか、ということです。ねぇ、鈴木さん』



 私がにっこりと隣を見ると、1拍置いて鈴木さんが「もちろんっ」と叫びます。



「この鈴木、もう一度闘いの舞台を与えて頂いた恩、まだ返し終えてはいないっ」



 悉くお顔を近付ける鈴木さんに、これ見よがしな愛想笑いを浮かべておきます。



『鈴駒さんは』



「そりゃあ、オイラは蔵馬に生きていて欲しいよ」


 素直な意見。素直すぎて、思わず鈴駒さんをぎゅってしたくなってしまいそう。


『凍矢さんは、如何ですか?』



「蔵馬はこれからの魔界に必要な男だ。

 現にあいつは、この先起こるだろう戦争のために、奔走していたしな」



『陣さんは?』


「ん〜〜、オラは難しいことはよく分かんねぇけど、蔵馬なことは好きだし、いつか闘ってみてぇしな」



 成る程、陣さんの指標が、少し分かった気がします。



『では、酎さんは?』


「あいつが死んだら悲しむヤツがいるしな。

 何より、蔵馬はあれでなかなか良いヤツだ。死なせたくねぇ」



『それでは、貴方は?えっと‥‥』


「死々若丸」少し離れた所で壁に凭れている男性、死々若丸さんを窺います。


『死々若丸さんは、如何ですの?』


 私の問いに、死々若丸さんは視線を背けます。



 そして一言「別に」。




 皆さん、そんな死々若丸さんに、やれやれといったご様子。



 私も、問い掛けと同じ視線を、死々若丸さんに投げ掛け続けます。



 そんな雰囲気に観念したのか、死々若丸さんは、端正な顔立ちを益々歪めて、「フン」と鼻を鳴らしました。


「まぁ、ヤツが死んでは、俺が此処にいる理由も、浦飯幽助と闘う理由もなくなるしな」



 死々若丸さんの答えに、私は満足で笑顔になります。



 少し、複雑な気分ですが。



『満場一致、ですね』



 私も、まだ文句を言い足りないことですし。



『では、蔵馬さまには、まだ生きて頂くことに致しましょう。


 皆さん、手伝ってくださいますね』




 私の選択は間違ってはいなかったようです。




 私は、改めてリビングを見渡し、私の手を握っていた鈴木さんの手を振りほどきました。










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