Baby,sing a song.
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目を覚ましたときには、もう、空は綺麗な水色で、太陽も平等な光を、街に注いでいました。
こんな明るい時間に起きたのは、久しぶりです。
お寺に居た頃は、毎朝5時に起きて、雪菜ちゃんと朝ご飯の支度をするのが、日課でしたから。
蔵馬さまは、もう、お発ちになったのでしょうか。
あの方のことですから、私を起こさぬよう、気を付けて行かれたのでしょう。
でも、お見送り出来なかったのは、少し、不覚でした。
昨夜、蔵馬さまがいらっしゃった場所は、もう、シーツ本来の温度に戻っていて、蔵馬さまのぬくもりを、一切感じさせません。
それでも、微かに香る薔薇の香りが、あの方と同じく、私を優しく包みます。
『ん〜‥‥』
私は、ベッドの上で、大きく伸びをして、上体を起こしました。
壁に掛けてある時計の時刻は、9時。
明け方よりは、寒さは和らいだけれど、太陽はまだまだ、その力を発揮仕切れていない、そんな時間です。
ふと、サイドボードに目をやると、白い、一枚のメモ。
昨夜の時点でなかった筈なので、置いたのは蔵馬さまでしょう。
手にとってみると、少し、蔵馬さまの妖気が残っているのが分かりました。
内容は、黙って出て行かれたことへの謝罪。それと、…何故か、このメモは捨てるなとのこと。
捨ててはいけない?
不思議に思いましたが、蔵馬さまのことです。何か理由があるのでしょう。
さて、今日は桑原くんたちが、11頃にいらっしゃるそうです。
たち、というのは、一体、どなたのことなのでしょう?
雪菜ちゃんだったら、嬉しい限りですが。あ、静流さんかも知れません。
とにかく、桑原くんたちがいらっしゃるまで、あと2時間弱。
私は、寝間着代わりのTシャツを脱いで、お気に入りのワンピースに袖を通しました。