Baby,sing a song.
□3.5
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『く…南野さん、ずるい。私には飲むなって仰ったのに』
声がして振り返ってみれば、隣には、カウンターに手をついて紗々が立っていた。
「あら、紗々ちゃん。どうだった?お客さんたちは」
『皆さん、とても楽しい方たちばかりで、安心しました』
紗々は、少しサイズの大きいドレスの肩口を気にしながら、微笑んだ。
その笑顔に、彩子も「それは良かった」と笑う。
『随分と楽しそうでしたけと、何のお話をしていらっしゃったんですか?』
紗々が彩子から、グラスに入った水を貰いながら、尋ねた。
蔵馬は、「う―ん」と考えた後、「大人のハナシ?」と言って彩子を見る。
その視線がなんとなく可笑しくて、彩子は「そうね、紗々ちゃんには、まだ刺激が強いかもね」と笑った。
同じ色のグラスを持って笑顔の二人を見て、紗々は不思議そうに、冷たい水を口に含んだ。
『大人の話、ですか』
そう呟く紗々を横目に見ながら、蔵馬は、今の会話を紗々が聞いたら、どんな顔をするのだろうと想像する。
まぁ、
でも、
それも、案外、楽しいかも知れないと、蔵馬はグラスを傾けた。