seven-TH-heaven

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「てなわけで、24時間以内に解毒剤を飲まないと、この子から感染した細菌が毒素を出して、全員死ぬことになるわ」



 ホームの広間。


 全員が集まるこの部屋の中心で、パクノダが言った。


「うぇっ。なんだぁ、そりゃ」


 低い声で、ノブナガが呻く。


「もともとは、こいつの存在を隠蔽するためのシステムだろう。

 捕虜になった場合のみ、発動する。24時間の制限時間はそのためだろう。

 逆に言えば、こいつらは、24時間以内に仕事を片付けなければ、問答無用で生体兵器にされるってわけだ」



 クロロの捕捉は、適切だった。


 推測のみでよくもそこまで分かるものだ、とパクノダは心の底から感心する。


「で、解毒剤ってのは、どこにあるんだ?」


「単純に考えて、こいつらの本拠地だろうな。

 まあ、もともと乗り込むつもりだったし、丁度良いだろう」



 クロロが広間の床に移動させられたセブンスを見下ろす。


 念糸で拘束されたまま、毛布を羽織らされていた。


 パクノダの気遣いだ。




 セブンスは、パクノダに全てを伝えた後、墜ちるように眠りについた。



 生まれてから今までの記憶を総て引き出したのだ。脳に負担が掛かっても不思議ではない。



「最初は無理だったのに、どうして?」


 パクノダがクロロを見る。


 当たり前のように、クロロは口元だけで微笑んだ。


「頸部と頭皮に手術の跡があったからな。物理的に催眠状態に陥らせている可能性があった。

 俺だったら、そんな面倒くさい手術は、爆弾を埋め込む作業と一緒にやる」



 パクノダは「なるほどね」と呟いた。


 世界中の誰よりも、クロロを敵に回すのは、馬鹿な行為だと思えた。



「他に、何が見えた?」



 クロロに言われて、パクノダは何を伝えようか迷う。情報が多過ぎたのだ。



 メモリボムの出番だろうか。いや、でも、ここには、他の団員もいるし。


「詳細は後で伝えるけど、取り敢えず、目についたのは、女ね。この子の母親」


「母親?」



「そう。飛び切りの美人よ。ゼロスって呼ばれていたわ。

 この子が殺したみたいだけど」



 未だ、セブンスは眠っている。


 クロロは「そうか」とだけ呟いて、定位置に移動した。



「シャル。こいつの身元は分かったか?」



 シャルナークが数枚の書類を持っている。


それが、セブンスに関する情報だということを、クロロは知っていた。



「んー。こいつら、ナベリウス機関の警備会社のエージェントだよ。

 まあ、会社なんて言っても、殆ど、軍事技術の研究とか武器開発ばかりしてるみたいだね。

 そんで、今回みたいに、警察の手に負えない事態に出動して、制圧に託けて、自分たちの開発した新技術の試験ばかりしてる。


 この子も、“進人類”っていう新技術の試験に駆り出されたんじゃない?」



 シャルナークが書類を渡しに来る。


 歩くたびに「いてて」と呻くが、まあ、気にしないでおこう。



 書類の最後に、ご丁寧にナベリウス機関本部の地図がプリントされていた。



「よし、じゃあ、日没と同時に此処を襲撃する。目的は解毒剤と、“進化論”の手掛かりだ」




 それまで解散と付け足して、クロロは思い思いの行動に移る団員を見送った。




 自由行動を言い渡され、マチとシャルナークは、興味深そうにセブンスに近付く。



 身体を丸め、無防備に眠るセブンスは、スマートな肢体からは想像出来ないほど幼気だった。



「本当に、俺の骨を折ったの、この子?信じられないな」


「事実だろ。苦戦してたくせに」



 シャルナークが感想を素直に述べると、マチがフォローもなく言葉を刺す。


 マチが近付いたことにより、念糸がより強靭になっていた。



「ああ、マチ、パクノダ。

 拘束を解いて、適当な服を着せてやれ。

 それから、起きたら纏を覚えさせろ」



 クロロの指示に、マチが「面倒くさい」とぼやいたが、無視された。


 マチが意外と面倒見が良いことを、広間に残った全員が知っていた。




 マチはセブンスの顔を見つめて、それから、クロロを見る。



「取り敢えず、団長、どんなの好み?」



「何故、俺に聞く?」



「なんとなく」





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