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□4.孤独と悲しき闇
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【孤独と悲しき闇】








その晩、オレは夢を見た。

それは、父親が死んだ時の夢だった。父親以外にも、親友だったオビトやオレの師である四代目が死んでしまった時の事も時折夢に見る。その夢を見た朝は、いつも堪えられない程の苦しみと悲しみに襲われていた。

そして今朝も例外ではなかった。












「よぅカカシ、生きてるか?」

ベットの上からぼーっと窓の外を眺めていると、アスマがノックもせずに病室の中に入ってきた。

「なんか用?」
「なんか用ってお前、見舞いに来てやったんだろーが」
「ふーん」
「おいおい、ふーんだけかよ、失礼なヤツだな」
「ドーモアリガトウゴザイマス」
「なんだよ、その棒読みは、全然気持ちが篭ってねーじゃねーか」
「なにヨ、人がせっかくお礼言ってんのに」
「そんな礼、嬉しかねーよ」
「そう?」
「まぁ別にいーけどよ、それにしてもお前、やけに気の抜けた顔してんなぁ」

あ、いつもの事かとアスマがベットに腰をかけ、笑う。失礼なのはオマエの方でしょーよ。

「ところでよ、カカシ」
「なにヨ」
「さっきここに来る途中にな、廊下ですっげぇ可愛い子見付けたんだ」
「へー」
「ピンク色のパジャマに栗色の髪でよ、ありゃ上玉だぜ?」
「………」

ピンク色のパジャマに栗色の髪?

アスマが言った人物像に、それがあの子だとすぐに分かった。

「…あぁ、不思議ちゃんの事ネ〜」
「不思議ちゃんてなんだよ」
「アスマが上玉だっていってる子だヨ」
「あの子、そんな名前なのか?」
「イヤ、名前知らないから勝手にオレが付けただけ」
「ほう、で、なんで不思議ちゃんなんだ?」
「不思議な子だから」

オレがそう言うと、アスマはお前ネーミングセンスねーなと鼻で笑った。余計なお世話だよ、まったく。少し睨む様にジロリとアスマを見ると、何か思い付いたように「そうだ」と言って手を叩いた。

「その不思議ちゃん、お前の知り合いなんだろ?紹介してくれよ」

アスマはそう言ってニヤリと笑う。ほんとにこのエロ熊は何しにオレの所へ来たのだろうか。手ぶらで見舞いに来といて、女を紹介しろなんて言う奴があるか。だいたい、あの子とは知り合いでもなんでもない。ただ二回会って少し話をしただけなのだから、紹介なんてできるはずがなかった。


「オマエさ、そんな事ばっかしてると紅にどつかれるヨ?」
「おい!まさかお前、紅にチクる気じゃねーだろーな」
「んな事するわけないじゃないの」

面倒事に巻き込まれるのは御免だねと零すと、アスマはばつが悪そうな顔をした。

「てかさー、そろそろ帰れば?」
「…お前、ほんと素っ気ない奴だよな」
「お帰り下サイ」
「いや、言い直しても変わりはねーよ」
「じゃ、なんて言えばいーの?」
「あー、もうなんも言わなくていーって」

アスマはベットから重い腰を上げ、ニッと笑って「また来るわ」と病室を出て行く。それを見届けたオレはハァと一つため息を付いてベットにゴロリと寝転んだ。

アスマはオレの事を素っ気ない奴だと言ったが、それはなにもアスマに対してだけではなく、誰にでもそうだった。オレは人との馴れ合いや連れ合いを好まない。その理由は簡単だ。

人との余計な繋がりは持ちたくない。

ただそれだけの理由。だからオレは必要以上に人に関わらない。そうすれば、もう悲しい思いも、辛い思いもしなくて済む。あの時みたいに悲しい思いをするぐらいなら、オレは孤独を選ぶ。

もう、大切な人なんていらない。

オレのそんな思いとは裏腹に、窓の外ではキラキラと太陽が輝いていた。



続く
210507

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