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□2.気になる中身は
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【気になる中身は】








三十分ぐらい病院内をフラつくと、オレは自分の病室へと戻った。

「やっぱり、歩き回るのはまだキツイなぁ…」

チャクラが回復してきているとはいっても完全ではなく、たかだか少しの散歩でどっと疲れが押し寄せた。フゥと一息付いてからベットに腰をかける。その時ポケットに違和感を感じ、さっき廊下でぶつかった子が落としていった巾着袋を拾った事を思い出した。

「…なんだろ、コレ」

ポケットから小さな巾着袋を取り出し、それを眺めながら呟いた。女の子らしい花柄の巾着袋は、何故か重圧感がある。

な〜んか硬いモンが入ってるみたいだネ。

手触りで中にやたらと硬い物体が入っている事がわかった。すごく中身が気になったが、人の物を勝手に開けて見るのはよくないよなぁとベットの横に備え付けられた棚の上へ巾着袋を置いた。

暫くして、暇潰しにイチャパラを読んでいると病室のドアが開き、見知った人物が入ってくる。

「調子はどうだい、カカシ」

コツコツとヒールの音をたてて入ってきたのは、里の長である綱手様。
読みかけのイチャパラを脇に置き、「なんとか回復してきてます」とオレは綱手様の方へ向き直った。

「で、何かご用でも?」
「用もなにも、お前の検診に来てやったんだろうが」
「綱手様直々にですか?」
「あぁ、お前には早く任務に戻ってもらわないと困るからな」

お前にしかできない任務が山積みでねと綱手様が意地悪く笑う。人が懸命に任務をこなした揚げ句のチャクラ切れで入院してるっていうのに、綱手様はもうオレをこき使う事を考えている。まぁ、仕事なのだから仕方ないっちゃ仕方ないけど、なんとも気が重い。

「ほら、血圧計るから腕出しな」

言われた通り腕を出すと、血圧計の器具をとり付けながら綱手様がポツリと零す。

「それにしても、天才だと言われ続けてきたお前が、チャクラ切れなんかで寝込むとはね」
「ハハ、まぁオレも一応人の子なんで」

そう、オレだって全てが完璧な訳じゃない。天才だ天才だと幼い頃から言われ続けてきたが、それは積み重ねてきた努力の賜物であって、自分の事を天才だなんて思った事は一度もなかった。もしオレがみんなが言うような天才だったとしたら、あの時大切な人達を失わずに済んだだろう。
そして、あんな悲しみも背負わずにいられただろう。

「カカシ、どうした?」

過去の出来事を思い出し、感傷に浸っていたオレは綱手様の声でハッと我に返った。

「あ…スイマセン、ちょっと考え事があって」
「お前が考え事?」
「えぇ、たいした事じゃないんですけどネ」
「…そうか、まぁいい、血圧は異常なしだ」
「そうですか」
「一応チャクラがどの程度回復しているか診ておくか」
「お願いします」

そうして診終わった綱手様によると、オレのチャクラはまだ三分の一程度しか回復していないようだった。「この分じゃまだ退院は無理だな、お前の任務は先延ばしにしておくよ」と綱手様がため息混じりに病室を出て行った。

そんなモノ先延ばしにしなくても、ヤマトあたりにやらせりゃイイでしょーに。

とブツクサ言いつつベットに横たわる。すると例の巾着袋がふと視界に入った。

「………」

あぁ、やっぱり中身が気になるなぁ。悪いと知りつつも、高まった好奇心には勝てず巾着袋を手にとり、中を覗いた。

「…は?」

オレはやっと気になっていた中身を見て首を傾げる。だって、可愛い花柄の巾着袋に入っていたのがただの石コロだったからだ。

え?なんで石?

くの字に曲がった形以外、特に変わった所もない石を大事そうに巾着の中にしまっておく理由がまったくわからない。あの子、石マニアなのかななんて思いながら、くの字型の石を元の巾着袋の中に戻した。

とりあえず、中身は見なかった事にしておこう。




続く
210505

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