六つ目の物語
□第22憑目
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狗神がこひなに見えるようになったばかりか、コックリの側にいなくても動けるようにまで霊力が上がってしまった
そうなってからはこひなか俺の周りを飛ぶようになっていた
そんなある日、朝食の時だった
大きな音を立てて、信楽の徳利をコックリが割ってしまった
「すまん!」
「仕方ねーよ
いずれ壊れちまうもんだし。
お前に怪我ねーならよかったぜ」
コックリが失敗なんて珍しいな
「俺に毛がなくてよかっただとー!?」
「グハァ!ホラ耳パンチ!」
何を勘違いしたのか、コックリは信楽を殴って家を出ていってしまった
「なんなのよ、あのこ…」
「あー…」
「最近コックリ変なんだよなぁ」
信楽の口から出ている血をタオルで拭かせ、俺は徳利を片付ける
出ていったはずのコックリが中庭から声がするので行ってみると、コックリアニマルバージョンが大量の液体を自分の身体に掛けていた
「バカ!こんな時期に育毛剤そんな使ったら…っ
大変な事に!大変な事に…っ!」
信楽が止めたが遅かった
コックリの毛がモノ凄い速さで成長し、家の高さよりも大きくなってしまった
「なったのです」
「あ、あれ?」
「すげーデカ…」
「ケサランパサランです。進化したのです」
「ケサランパサラン育ったな…」
「ったく、季節のはえ換わりに大騒ぎしすぎだろ」
「けっ
ボケが始まってるのでございますか」
もしかしてコックリははえ換わりの時期を忘れていたのか?
動物ならそんなこと忘れんなよな
「とりあえず…」
「「「「刈るか/りませう/りましょう/ろう」」」」
俺達は髪切り鋏やバリカンを取り出す
「うるせー!
もうはえてこないかもしれない微妙なお年頃なんだよ!
あと、その手に持った凶器を仕舞え!」
そんなこと言ったらお前一生中庭暮らしだぞ?
んなこと、禿げるより困るだろ
それに禿げることは昔は一生懸命働いてストレスに勝った男の証なんだからいいだろ
ハゲの光は栄光の光なんだぞ
それを子どもや女がハゲは汚いだの変なイメージを作るからいけないんだ
逆に薄くなってた時に禿げてるやらキモいなど口にする方が禿げるんだから、薄くなったら労ってほしいよな
なんでこんなことを言っているかというと、俺の祖父さんもハゲていたから俺も禿げるだろうと思ったからだ
皆!俺が将来禿げたら優しくしてな!
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