稲妻11(文)

□甘い甘い口付けでした。
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君と僕。の続き。
※身体は男、心は女な半田ちゃんのお話。
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風丸は唯一、俺の秘密を知っている。
軽蔑したようなそんな顔一つ見せず、ちゃんと俺を受け入れてくれた。
それが凄く嬉しかった…今でも忘れられない。

一人で全て抱えていた不安な気持ちが一気に軽くなって、そこから風丸との仲も前よりも深くなっていった。


でも、そこから少しずつ可笑しくなってしまったのかもしれない。


風丸は俺の事を女として扱ってくれてるからなのかな?


もしそうだとしても


付き合っていないのにキスをするのはどうなんだろ?





―――――――――――…


「んっ…はぁっ…風ま…苦しッ」


ほら今日もまた…
風丸の部屋に来るといつも決まってキスをするようになった。

最初はビックリしたけど嫌じゃなかったしされるがままに風丸にまかせていたらいつの間にかこんな関係になってしまった。


後悔…はしていない。
いや、やっぱ少しだけしてるかも


だって…


このキスの理由にきっと俺の事を想ってくれてる事なんてない。
だって俺達は、恋人同士じゃないから…



「ぷはあっ!…はあっ…はっ…風丸…だんだん長くなってきてないか?」
「そうか?俺はこれでも物足りないぜ」
「………」


イケメンが爽やかな笑顔でその台詞はミスマッチだろう。
イメージが崩れる…色々と…うん、色々と


「半田には頑張って体力つけてもらわないとな」
「お前の願望には答えたくない」
「相変わらず冷たいなあ半田は」


今度は困ったようにくしゃりと微笑む風丸に少し胸がきゅうと締め付けられた。
ああ…俺はこの人の事がこんなにも好きなのに…


きっと風丸は俺の事を“ただの暇潰しな相手”としか思ってないんだ。


「………っ」
「…はん…だ…えっ、半田!どうかしたか?」
「え…どうかって、どうもしてないけど…」
「でも…お前、泣いてるぞ」


は?泣いてる?俺が…あ、本当だ。
風丸がはっきり見えないや。
視界がぼやけて頬に伝った冷たいモノを感じて自分が泣いていた事に気付く。

何で…あんな分かり切った事考えたくらいで泣いてしまったんだろう。
これじゃ風丸に迷惑だろ…つか面倒な奴だって思われたくない。
ただでさえ男女で気持ち悪いってのに…


「な、なんでもない…」
「なんでもない事ないだろ。俺に言える事なら言えよ、何でも聞いてやるから」


お前に一番言えない事だよ。


「本当…大丈夫だから…っ」
「大丈夫なわけないだろ!俺がさっき変な事言ったのが嫌だった?」
「違う」
「じゃあ誰かに嫌な事言われたりされたりしたのか?」
「違う」
「じゃあ…「もうほっといてくれよ!」


柄にもなく荒い声をあげると風丸がびくりと反応した後とても切ない顔に変わった。

ああ…そんな顔してほしかったわけじゃないのに。
つかお前いつもだったらこんなにしつこく聞いてこねーじゃん…

何処か大人で人の事にあまり深く探ってこないくせに
何で今日はこんなにしつこいんだよ


風丸にとって俺は特別な存在なんかじゃないのに…




「…すまない」
「いや、俺の方こそごめん…って」


ふわり。
うん、きっとこの表現がぴったりだと思う。

突然だったけど優しくそっと包み込むように風丸は俺の事を抱きしめてくれたから。
綺麗な長い髪の毛が擽ったいし、シャンプーのいい香りもして嫌でも風丸の事を意識してしまう。
おかげでさっきから心臓の音が恥ずかしいくらい五月蝿い…

ああ、風丸に聞こえてるなこれは絶対に。


「凄いな…」


ほらやっぱり。


「おっお前が突然抱きついてくるからだろ!」
「それは悪かったな」


謝る気があるのかと言いたくなるような素っ気無いように可笑しく笑った風丸に何故だか少し顔に熱が集まってしまった。



「…なあ、半田に聞いてほしい事があるんだ」
「俺に…?」
「ああ、半田に」


一体何だろう…
そんな事を思っていると風丸が先程より少し抱きしめる力を込めて俺の耳元で優しく囁いて来た。
もうっ…今度は耳が擽ったくなったじゃんか…あ、あと熱い。


「俺さ…半田の事が好きなんだ」
「ふーん…て…」


………は?え?好き…って…


「おいおい、人の告白を随分あっさり…って、うん。ちゃんと届いてたみたいだな」


顔真っ赤だぞとくすくす可笑しく笑う風丸に俺は「好き」だと言われた事で頭の中がいっぱいで…
何で?え?だって俺ら…


「風丸が俺に会う度にキスしてたのって…」
「ん?好きだから」


“好きだから”
ああ…何だそうか…そうだったんだ…


どーしよ。
嬉しすぎて泣きそうだ。

風丸は俺の事を暇潰しの相手としてじゃなくてちゃんと…


「あ、また泣く」
「だって…風丸が…っ」
「今度は俺のせいだろ?何、好きって言われて嬉しかった?」


さっき泣いたのもお前のせいだよ。
そう言ったら風丸はどんな反応するかな?
だけどさっきとは泣いてた意味が全然違う…だってこれは嬉し涙だ。
風丸が俺の事好きって言ってくれたから…


「うん…まあ、そんなとこかな」
「……っ、照れると思ったのに。…参ったな、俺の方が恥ずかしくなってしまったよ」


普段見られない照れた風丸を見て、可愛いななんて思いながらまたまたきゅっと心が締め付けられる。

どうやら前よりももっともっと風丸の事が大好きになってしまったようだ。

つか何でこのタイミングなんだよとか色々ツッコミたい事が沢山あるけどその前に


俺も言わなきゃ。



「…俺、男だぞ」
「その前に女の子でもあるし…そこは気にしない」
「でも男なのに女みたいで気持ち悪いだろ」
「全然。半田が女の子になりたいなら半田は俺の中でずっと女の子」
「………っ」
「半田」

「……俺も…ずっと、好き…でした」


今度はちゃんと見つめ合って、顔が林檎みたいに赤く染まった俺に風丸はちゅっと音を立てながら短い口付けをしてくれた。


「「………」」


だけど何回もしていたはずなのにそれは何処かぎこちなくて…
それが何処か可笑しくてお互い照れ臭そうにくしゃりと笑ってから俺からもう一回とお願いすれば、風丸は嬉しそうに頷いてもう一度唇を重ねてくれた。

うん、幸せ。
俺は風丸とずっとこういう関係になりたかったんだ。


恋人同士になってから初めての風丸からのキスは…



甘い甘い口付けでした。



(実はあの日からずっと半田の事好きだったんだぜ)
(っ!!まじかよ)
(一目惚れだったんだ)


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風半で続き。
無事両思いになりましたとさ!
めでたしめでたし。




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