稲妻11(文)

□女の子の時間
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※身体は男の子、心は女の子な半田君の話。
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キラキラ

キラキラ…

輝くそれを女の子達は嬉しそうに楽しそうに着飾っては幸せそうな顔をする…


ああ…


何で俺はそれが出来ないんだろうか?




――――――――――…


「………よしっ!完璧」


なーんて、鏡に向かって笑顔を作る。
先週一目惚れして買ったフリルの付いたスカートをヒラリと揺らせば自然と頬が緩んでしまう。
いや…実際にはニヤニヤしてて気持ち悪いんだろうな。


「…今日は何処に行こうかな〜」


軽い足取りでキャラメル色のブーツに手を伸ばす。

ああ…幸せだ
女の子のモノってキラキラしているしとってもワクワクする。
狡いよな!マジで。


「………っ」


……でも



男の俺がこんな格好をしているのは傍から見れば凄く可笑しな事なんだと思う。

何で俺は男の子に生まれちゃったんだろう?
どうして俺の身体は男の子なんだろう?


本当は俺…



―――――――――――…


「(うっわぁ…これすげー可愛い!)」


フラリと入った店に自分好みの淡いピンク色のワンピースが目に入った。
素敵…素直にそう思った。
だけど…


「(…どーせ着て落ち込むだけだろ…やめやめ!)」
「そのワンピース可愛いですよね」
「えっ!?あっ…はい…」


あれ?俺そんなに見てた?
触ってもいなかったはずなのにいつの間にか店員が持ち前の営業スマイルで俺に話しかけてきた。
ああ…うっとーしいな…
男ってバレたらこえーし…


「それ結構人気なんですよ。あっ、着てみます?」
「えっ…いやっ、私は…」
「ふふっ、なら合わせてみるだけならどうですか?凄く気になられたみたいですから」
「あっ…」

やっぱり…どうしようっ、すっげー恥ずかしいっ…!
ガン見してたのに着ないっていうのは変なのかな?
普通こーゆうのって着たりするのか?

隣のお姉さんは相変わらずニコニコ笑ってるし…
つか俺の事見すぎじゃね?

「あ…じゃあ合わせるだけなら…」
「かしこまりました。では、持って来ますので少々お待ちください」


うん…押しに弱いな俺…
こんなんじゃ金がいくらあっても足んねーぞ…
つかあれいくらかな?後でタグ見てみっか

安かったら買おうかななんて考えていたらお姉さんがワンピースを抱えながら笑顔で戻って来た。



「お待たせしました。どうぞ」
「あ…どうも」


やばいな、近くで見るとすげー可愛い…
ドキドキしながら鏡と睨めっこ。
ワンピースをふわっと持ち上げ自分にピタリと合わせるとお姉さんの顔がより一段と明るくなった。


「わぁー。良くお似合いですよ」
「…え?」
「うん…凄く良いと思います…そのお色お客様にお似合いですね」
「………」


今度はまじまじと見ながら答えるお姉さんに少し胸がキュッとした。
お姉さんは店員だから…俺に買わせるために言ってるだけで
お世辞だから本当に似合ってるって言われてるかなんて分かんないけど…


でも…

初めて女の人に“可愛い”って褒められてるみたいでそれが凄く嬉しかった。


「あの…」
「はい?」
「こっ…これ買います!」
「…はいっ、有難うございます」


キラキラ…
キラキラ…

ふわりと揺れるワンピースがあの言葉だけで何故かさっきよりも可愛く思えた。


そしてタグを見ずに買ってしまったこの服はどうやらセール品だったみたいで俺のお小遣いで何とか買えた。


――――――――――…

「はぁー…でも今月はもう何も買えないな…」


だけどいくら安くても中学生の財布の中身なんてたかが知れている
たった一日で随分と寂しくなってしまった財布を見ると自然とため息が零れてしまった。


「………」



“沢山着てやって下さいね”



定員さんにそう言われながら手渡された紙袋は一段とキラキラと輝いて見えた。
今まで声をかけられるのが嫌で避けてたけどこーゆうのもなかなか良いモノなんだな
バレるかもしれないからヒヤヒヤするけど…でもやっぱり誰かに褒められると嬉しいから…


「…来週はこれ着て何処に行こうかな」


誰にも言えない俺だけの秘密。
この時間だけが自分は男の子じゃなくて女の子なんだと思えられる…
そんな矛盾しているけれど正直なこの時間が俺は凄く大好きだ。



女の子の時間



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心が乙女な半田君のお話。comicで描いた性同一性障害の逆バージョンです。
あああ…っ風半にするつもりがただの半田ssになってしまいましたね←
風半書きたいよ!風半ッ!!!!




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