短編集

□beautiful day
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アッシュが還って来て二度季節が巡った。

世界は緩やかに、平和への道を歩んでいる。
キムラスカやダアトとは、同盟を結んでから友好的な関係を築いている。

もう、国同士の争いは無いだろう。
兵も、魔物相手か盗賊などの相手にしか出兵は無くなった。

見ているか、ルーク。これがお前が成した、世界だ。

私室にいるブウサギのルークを抱き上げようとするが、つれなく逃げられ変わりにサフィールを撫でる。
ルークと名のあるものには、己は縁が無いらしい。
苦笑して、ふと机にのる書類が目に映る。
内容を斜めに見て、要点だけを考えた。けれど、これは自分の専門分野ではない。

「ジェイドに聞かなきゃ解らんな…」

呟いて、己の懐刀を頭に描く。
彼はずっと後悔していた。恩師のレプリカを作ったことに対して、フォミクリーを考案したことについて。
そして、朱色の子供を殺してしまったことを…。

その朱色の子供を主とした金色の伯爵は、子供の同胞を助けることに生きがいを感じているようだった。
数ヶ月前に、ガルディオス家の領土をレプリカの土地とした。
彼は、憤るどころか嬉しそうに笑ったのだ。
「アイツの願いを聞ける」と。

彼にとって、子供は親友であり主であり、恋焦がれる者だった。
だからこそ、領土とレプリカ保護の総責任者を嬉しく思ったのだろう。

そんな彼を、ジェイドは眩しそうに見ていた。

ガイラルディアは一歩を踏み出した。
お前は、いつまでそこに留まっている?

子供のためを思うのであれば、彼にはやれることがある。
けれど彼はそれを知っていて、足を踏み出せない。
だが。

「あいつが留まっていてくれているのを、喜ぶ俺も…確かにいる」

だって、己の傍にはもう彼しか居ないから。
離れて欲しくない。
けれど、ジェイドが願うなら…笑って送り出してやろう。

相反する気持ちに胸が痛んだ。



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