短編集

□二度目の人生
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気付いたら目の前には、海があった。

…なんで。

俺は、あの時に乖離して消えた筈だ。なのに、なんで、「何故」と思える、有り得ないと考える事が出来る!?

消えたのなら、普通は考えられない!
……なら、乖離せずに生きられたのか。

あんなにも、恐怖をひた隠しにしていたのに!

ふと、海を見る。

エルドラントが、ホドがない…?

いや、この景色は見覚えがあった。

セレニアの花、海、この景色。
忘れられない、初めて見たあの時の景色!

ゆっくりと辺りを見回す。
セレニアの花に埋もれている少女がいた。

あぁ、懐かしい…ティアがいる。

けれど、約束を交わした彼女じゃない。

自分自身を見た。

髪が長い、始まりの時に着ていた白い服。

少し身体を動かす。

思うように動かない、身体が重い。

これはもう決定だ。
俺は、過去に戻ってきた。

ローレライを解放したのに、この仕打ち!

何だよこれ!俺にまたあの過酷な人生歩めってか!

何回も死ぬ覚悟を決めろっていうのかよ、ローレライ!


冗談じゃぬぇーぞ、そんなの誰がやるか!やるなら、アッシュにでもやらせろっての!

せっかくローレライを解放して、俺の命と交換に世界を救ってやったのに、やり直しだ?

誰がやるかっつーの!
テメーが何を思ってこんな事したのかしらぬぇーけどな、俺はもうこれ以上、誰かに振り回されんのは真っ平だ!

いいか、ローレライ!

俺は俺が望む通りに生きてやる!

テメーの解放なんざ、被験者がやればいいだろ!


脳内でローレライに文句やら宣言やらを叫んでいると、ん、という微かな声が聞こえた。

(やべ、ティアがいたんだっけ)

起こす気にはなれない。だって始めの彼女は好きじゃない。
あの時の様になってほしくても、彼女は約束をした彼女じゃない。そうなるまでには、あの悲劇を繰り返す事になる。

むしろ、あれを繰り返す位なら、約束した彼等は『死んだ』って事で納得しよう。

(つーか、死んだのは俺だけどな)

起きない事に安堵して、これからを決める。ここにいても仕方ない。

(まぁ、何をするにも、先ずは金だ!アニスじゃねーけど、やっぱ必要だしな!)

寝ているティアを放って、森の中を進む。

(ここら辺の魔物はあんま強くねーけど、俺のレベルはそんなに高くねぇ。稽古にはぴったりだろ)

ティアが寝ている方をチラリと振り向き、思う。

(師匠を一人で倒そうとしたんだ、ここだって一人で出れるよな。つか、お前がいたらまたあの過酷な人生を歩む事になるだろ?てことで、じゃあな!)

これからの人生を思い描いて、ニヤリと笑う。

「さぁて、魔物に遭って遭って遭って遭いまくって経験値アップと金稼ぎだ!」





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