短編集
□勝手に言ってろ
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街道を進み、気付くと村が見えた。
頭の中でマルクトの地図を描く。
(……そうか、ここがエンゲーブ。農業の村)
久しぶりにベッドで寝たい。焼いただけじゃなくて、きちんと料理された肉が食いたい。
押さえていた欲求がとりとめもなく溢れ出る。
歩くペースが少し速くなった。
と、前から戦艦が走ってきた。
よく見ると、前を走る車を追っているようだ。
(でけー。あれ…タルタロスってヤツか?)
少し前に、音機関偏執狂に聞いた、『マルクトの戦艦』に酷似しているそれ。
『まぁ、お前はマルクトに行けないから見れないだろうけどな』
そう言われていたが、多分、アイツより先に見たんじゃねーか?
そう思うと、少し嬉しくなった。
眺めて、通りすぎ様に少し振り返る。戦艦から『そこの辻馬車!』と声が聞こえた。
見ると、俺が来た方面から一台の辻馬車。巻き込まれない様に端に寄ってる。
眺めてても仕方ない、と前を向いた直後に轟音がした。
そろりと後ろを見れば、カイツールに行くための橋が墜ちている。
(あーあ、当分帰れねーな。ありゃ)
帰るつもりはないが、一応思っておこう。もしかしたら、親友兼下僕が迎えに来るかもしれないし。
とりあえず、再び歩き出す。
てか、あの辻馬車ってこの間見たやつか?もう抜かれてるって思ってたけど、意外とのんびり走ってたんだな…。
…まさか、あの女が乗ってる、なんてことねーよな…?
微かに嫌な予感を抱きながら、エンゲーブの中に入る。
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