短編集
□世界が望み人々が望み
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人に何度、死を強制されただろう。
一度目はアクゼリュス。キムラスカの繁栄の為に、いつの間にか死を強制させられた。
あの時はなんとか生き延びた…けれど確かに、『ルーク』は死んだ。
殺された。
仲間だと思っていた彼らに、敬愛していた師匠に。
今の俺は、ただ臆病に人の顔色を伺い、人に失望されないように見捨てられないように…見限られないように取り繕っているだけだ。
これでは、既に生きている、なんて言えないだろう。
ただ、生かされている。
オリジナルの代用品として。
レプリカは何処までいってもレプリカでしかない。
その最たるものが、障気中和だ。
ジェイドに陛下に世界に『障気中和をして一万人のレプリカ達と死んでくれ』と言われた。
その傲慢な態度に吐き気がした。
障気はオリジナルが産み出したモノだろう?
俺達レプリカには関係ないモノだ。
それなのに、何故オリジナルの為に犠牲にならなければならない!
『逃げても追わない』?
有り得ないだろう、その視線が言葉が雰囲気が断る事を許さない!
『命を大切に』?
なら、何故オリジナル同士で解決しない!
結局の所、レプリカの命はオリジナルの命より軽いんだ。
だから、レプリカを簡単に死なせる言葉が言える。
あぁ、世界はなんて醜いんだろう。
少し前までは、世界に出たくて仕方無かったのに、今はもう絶望しか沸いてこない。
こんな世界、居たくなかった。
だから、障気中和をした。
一万人のレプリカ達と死ねる事を幸せに思いながら。
けれど、なんの因果か俺だけが生き残った。
アッシュが邪魔したんだ。
他の同士達は逝ってしまったのに、俺だけが生かされた。
世界はそんなにも俺が嫌いなのかと絶望した。
そんな時、異変が起きた。
音素乖離が起きて、時々身体が透けていく。
それは緩やかな死だ。障気中和の様に一気に消えるわけじゃない。
迫る死に恐怖が募る。
それでも、何処かで安堵していた。
漸く死ねる。
確かに消えるのは怖いけれど、これからを生きる方がもっと怖かった。
そして、宣言される。
『音素乖離している中でのローレライの解放は、』
その先は聞かなくても解った。
そして同時に、漸くだと思った。
明日、エルドラントに乗り込んで師匠を倒して、ローレライを解放して、俺は…死ぬ。
久しぶりに笑えた気がした。
三度目の死は、世界に強制された。
(なら俺は、二度とこの世界に生まれ落ちない事を望んでいる!)
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