短編集

□未来へと馳せる、面差し
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ワールドカップが終了した。
結果はアメリカの勝利で終わり、MVPもパンサー君に決まって。
長かった1年は、今ここで終止符を打たれた。

昨日、激闘を演じた会場を眺めながら、セナは始まりの時に想いを馳せる。

(あの時、ヒル魔さんに拉致されていなければ…今頃どうなっていただろう?)

思い出すのは十文字達にパシりに行かされた、あの入学式の日。

彼処は偶然にもアメフト部の部室がすぐ近くにあって、そこで殴られそうになった所を栗田さんに助けられたんだ。

(そして、栗田さんに話を聞いて。目標に向かう栗田さんが楽しそうに見えて)

だから、『主務』として、目標に向けて頑張る栗田さんを手伝いたいと…、思ったんだっけ。

(翌日、何故か選手としてフィールドに立てとヒル魔さんに言われたけれど)

その時の恐怖を思い出して、苦笑いが浮かぶ。

でも、主務としてじゃなく。
選手としてこのフィールドに立っていたから、あの胸が熱くなる闘いを、強い相手と闘う興奮を知る事が出来た。

(あの時あの場所であの事が無ければ、きっと今此処にいない)

運命、なんて言葉は好きじゃ無いけれど、きっとこうなる事が運命だった。

今までに戦った相手を思い出す。

誰も彼も強かった。皆が自分のチームの為に死力を尽くして、己が持てる最大限の力を発揮した。そうして、強い者が勝利する。

(そう、そうやって僕達は勝ち続けてきた。けれど、)

「負け、ちゃったな」

今までにだって負けたことはある。負けて、悔しがって、次こそはと思って。練習をし続けて、リベンジに燃えて。そうやって僕達、泥門デビルバッツは成長し続けた。

だから、負けてそこで終わりではないと知っている。

けれど、

「もう、このメンバーでは…戦えないんだ…」

時が永遠ではないと知っていたし、何時までも共に戦えるなんて思ってはいなかった。でも、それでも、哀しい気持ちは抑えられなくて。

「あれ…っ」

いつの間にか流れていた涙に戸惑うも、顔をくしゃりと歪ませ嗚咽を殺しながら泣いた。

「勝ち、たかった…!」

パンサー君に。
アメリカに。

「負けたく、なかった…!」

チームメイトの為に。
何より、己の為に。

「強く…なりたい…!」

誰よりも何よりも。
もう、悔し涙を流さない程に。

流れる涙を乱暴に拭い、キッと試合会場を睨み付け心に誓う。

「もっともっと強くなってやる…!」


そうして、彼は高みを目指して歩み続ける。



いつかまた、彼等と共にあの場所で。
(それは、ただ純粋な闘争心)

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