短編集
□二度目の人生
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染め始めてから一時間。漸く終わったらしい。鏡を持っておっちゃんが見せてくる。
「これでどうだ?」
「ふーん…いい感じだ!ありがとな!」
ムラとかが全然ない。綺麗に真っ黒になった、己の髪。
これからの人生を考えると、幸先がいい!
「いや。あぁ、お前さんはこれから何処へ行くんだ?」
俺のはしゃぎっぷりに苦笑しながら、問われたその言葉。
…むしろ考えてなかった…。
「んー…?何処って…決めてねぇな…」
「なら、ここら辺はまだ魔物がいるだろうからグランコクマに着くまで護衛してくれないか?」
「護衛?グランコクマか…まぁ、いいぜ」
今の時期は和平の使者でジェイドはいないだろうし。陛下とフリングス少将はいるだろうけど、見掛けたら隠れればいいだろ!
てかジェイドは…、隠れても意味なさそうだよな。むしろ敏感に反応して追い掛けてきそうだ。
そう考えて苦い笑みが浮かぶ。
彼等ともう旅が出来ないのは悲しいが、それでも。俺はもう死にたくないんだ。
「そうか、ありがたい!俺はサントスってんだ。よろしくな」
物売りのおっちゃん――サントスさんは笑みを浮かべながら右手を差し出してきた。その手を握り返しながら、名を名乗る。
「あぁ、よろしくな。俺は―――」
『護衛としての人生も有りじゃねぇ?』
(もう誰も殺さない!ていうか殺せない!だって俺の装備は木刀だし?)
end