短編集
□二度目の人生
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2、3日森をさ迷っていると、色々な魔物と遭った。何回も遭っているうちに、レベルアップしたのか、あんまり魔物と出遭えなくなった。
けど、その代わりとでもいうのか、人間――盗賊とかに出遭う事もあった。
それなりに金とレベルをゲットしたので、街道へと向かう。
けれど、その途中で魔物に襲われている人がいた。
通り道だし、レベル上げには丁度いい。
そう思って魔物に向かう。
「双牙斬!」
「大丈夫か?」
「あぁ…お前さんは…」
「俺?平気だぜ」
「そうか…助けてくれてありがとうな」
「いや、別にいい」
一体を倒したら、その後に何体かまた出てきた。
黒光の昆虫の様な奴らだぜ。
まぁ、そのおかげで景気よくレベルは上がっていくけどな!
ふと、助けた相手を見遣る。
さっぱりとした服装に、マント。持っているのは鞄一つで、旅をしているようにはあまり見えない。
「おっちゃんは…ここで何してんだ?」
「俺は水を汲んだ帰りだ。坊主こそ、ここで何やってたんだ?」
何を。…何っていわれてもな。
「んー…生きる為に必要な前準備?」
「はは、なんだそりゃ。あぁ、助けてくれた礼に、乗っけてってやるよ」
乗っける?ん?
「おっちゃん、馬車持ってんのか?」
「あぁ、物売りだからな」
馬車は向こうに置いてある、と言って後ろを指差す。
夜で辺りが暗いため木々で姿の確認は出来ないが、確かにその方向には気配があった。
ふーんと頷き、ならばと言葉を返す。
「なら、髪染めとマント売ってくんねーか?」
「あぁ、いいぜ。染めるなら俺がやってやろうか?」
「へ?染めてくれんのか?んじゃ頼むな!」
思わぬ言葉に驚きながらも、その善意を受けとる。まぁ、俺がやっても所々塗り忘れが起きそうだし、そうなれば染めてるのがまるわかりで意味がねぇ。
おっちゃんの後を追って、馬車まで歩く。おっちゃんは後ろの荷台から数種類の髪染めを取り出した。
「どの色にするんだ?」
金・銀・桃・黒・緑等、色々ある。
今の色は赤…っていうか朱色だから、それより濃い色にした方がいいか?
肩にある己の髪を一房取り、眺める。
これが朱色以外になるのか。どうせ変えるなら、ガイとか陛下みたいな金髪とかにしてみたかったけど…仕方ぬぇーよな…。
少しがっかりしながら、答えを返す。
「黒、かな」
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